ジュエリーの基礎知識

宝石の輝きの秘密。「光沢」や「屈折率」、それぞれの光学的特徴とは

宝石の条件、美しさ。
古代では「色」が宝石の美しさを決定づける最も重要なファクターでした。

しかし、研磨技術が発達した現代では宝石表面の光沢(こうたく)や、光に反射する輝きも、宝石の色同様重視されます。

今回は宝石の輝きについて。
宝石の「光沢」の種類一覧、「屈折率(くっせつりつ)」の意味とは?宝石の輝きの秘密についてみていきましょう。

宝石の輝き「光沢」:表面の反射

まずは宝石の表側、表面の光沢について。

研磨の状態や結晶の大きさといった状態にも左右されますが、まずは宝石そのものが持っている性質に注目。

宝石の光沢は大きく金属光沢と非金属光沢に分けられます

金属光沢

金や銀、白金のような金属特有の光沢を指します。

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宝石の中にも金属光沢を持つものもあり、硫化鉱物に多くみられます。

金属光沢の宝石は、内部に光を透過せず表面で反射、かつ強く鋭い反射が特徴

パイライトの結晶や金属を思い浮かべるとわかりやすいのではないでしょうか。

◆主な該当宝石:パイライト、ヘマタイト

非金属光沢

光沢の強い順から紹介していきますね。

  • ダイヤモンド光沢

文字通り、ダイヤモンドに近い屈折率を持つ光沢を指します。
非金属光沢の中では一番強い光沢を持ちます。

◆主な該当宝石:ダイヤモンド

  • 亜ダイヤモンド光沢

ダイヤモンドに次いで強い屈折率を持つ光沢。

反射の強さはダイヤモンドほどではないものの、宝石の中では目をひく強い光沢が特徴。

◆主な該当宝石:ジルコン、デマントイド・ガーネット

  • ガラス光沢

玻璃(はり)光沢とも呼ばれ、多くの宝石の光沢を指します。

ガラスのような輝きは、非金属光沢の中でちょうど中程度の光沢と位置付けられています。

◆主な該当宝石:ルビーサファイアエメラルド、クオーツ類

  • 樹脂光沢

反射は明瞭、しかしガラス光沢に比べると少し光沢が鈍くなる樹脂光沢。

有機物由来の宝石に多くみられます。

◆主な該当宝石:琥珀、べっ甲

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  • 脂肪光沢

光沢が認められるものの、弱く不明瞭なのが脂肪光沢。

ろう光沢とも呼ばれ、非金属光沢の中では一番光沢が弱い分類です。

◆主な該当宝石:珊瑚ターコイズオパール

 

また、非金属光沢に分類されるものの、光沢の種類が異なるものが3種類あります。

それが真珠光沢絹糸光沢土状光沢
ひとつずつ見ていきましょう。

  • 真珠光沢

真珠の表面に見られる光沢を指します。

基本的には真珠のみですが、プレナイトはガラス〜真珠光沢を示すとされています。

◆主な該当宝石:真珠

  • 絹糸(けんし)光沢

絹の糸を集めたような、繊細な光沢を示します。

針状結晶など構造に特徴があり、絹糸光沢を活かす研磨方法でより顕著に現れます。

タイガー・アイメソライトは磨く方向によってガラス光沢と絹糸光沢の異なる輝きを示します。

◆主な該当宝石:タイガー・アイ、メソライト

  • 土状光沢

光沢がほとんどないものを土状光沢と呼びます。

細やかな粒が集まってできたような結晶であったり、粘土状の鉱物にみられます。

ゲーサイトはダイヤモンド〜金属光沢、土状光沢を示す珍しい鉱物。
ヘマタイトは金属光沢と土状光沢を示します。

◆主な該当宝石:ゲーサイト、ヘマタイト

光沢の種類は、基本はどれか一種に分類可能。
しかし、プレナイトやメソライト、ゲーサイトなど複数の光沢を示す宝石もあります。

これは研磨方法や産出時の結晶の違いによって生じます。

宝石の輝き「反射」:内側の反射

光を反射する宝石表面の輝き「光沢」。
内側の反射は「屈折率」によって輝きが異なります。

屈折率とは。単屈折と複屈折の違い

ダイヤモンドのカットの記事でも触れたことがあるこの「屈折率」。

光が宝石を通過した時、跳ね返る速度や角度によって異なる光の進み方を表す指標です。

簡単にいえば、屈折率とは「光が物質内で曲がる程度」を表しています。

この屈折率は、宝石を鑑別する上で重要な要素のひとつ。

屈折率は「高い、低い」で表され、高いほど反射する光量が多いとされています。

ダイヤモンドは最も高く、2.42の値を示します

ルビー、サファイアが1.76〜1.77。
クオーツが1.54。

数字ではピンとこないかもしれませんね。
しかし、数字が大きいほど宝石内に入った光が抜けずに反射して返ってくるといえばどうでしょう。

ダイヤモンドのあの輝きは、取り込んだ光の量をたくさん返しているからこそ

屈折率が高く、透明度の高い結晶であるほど強い輝きを放ちます。

そして屈折といえば単屈折と複屈折

物質に入ってきた光が二方向に分かれる複屈折と呼びます(一つの場合は単屈折)。

カルサイト、ジルコン、ペリドットにみられます。

特にカルサイトはその程度が大きく、文字の上にスライス状のカルサイトを置くと下の文字が二重に見えます。

POINT

  • 宝石の輝きは主に表面の光沢、内側の反射によって決定される
  • 光沢は金属光沢、非金属光沢に分類。非金属光沢は約8種類
  • 同じ鉱物でも結晶の形状、研磨の方法によって示す光沢が変化することも
  • 屈折率は高いほど輝きが強く、ダイヤモンドの屈折率は2.42
  • 強い輝きは屈折率の高さだけでなく、結晶の透明度の高さも重要な要素

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