ジュエリーの基礎知識

王冠の形の種類。クラウンとティアラの違いとは?

2023年5月6日はイギリス国王の戴冠式

 

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ロンドンで執り行われるチャールズⅢ世の戴冠式(たいかんしき,coronation)は、世界中から注目を集めています。

1000年以上前から続くこの伝統的な儀式に欠かせないアイテムのひとつが「王冠(クラウン)」。

どのような王冠が戴冠式で用いられるのでしょう。

そもそも王冠とは?
クラウン、ティアラはどのような違いがあるのでしょうか。

王冠の種類。クラウンとティアラの違いとクラウン・ジュエル

冠(かんむり)」。

英語で「クラウン(Crown)」と呼ばれ、重厚に輝く金属製の「王冠」だけでなく、花や植物などの素材で作ったものも冠と呼ばれます。

このように広義では「冠」は頭にかぶるものの総称でありますが、一般的な認識としては「王冠(クラウン)」を指します。

クラウンとティアラの違い

クラウンとよく似たものに挙げられるのが「ティアラ(Tiarra)」。

「ティアラ」はブライダルジュエリーのひとつとして身につけられるなど、クラウンよりも身近な存在かもしれません。

では、このふたつの違いとは一体何でしょう。

クラウンは男性用の冠で、ティアラが女性用の冠との認識が強いですが、実は身につける性別だけで分類されているのではありません。

  • 形状

クラウンは筒状、ティアラは半円状と、土台の形状が異なります。

下から見た時の形状が、クラウンは切れ目のない完全な円なのに対し、ティアラは後ろ側に切れ目があります。

ティアラの底面はカチューシャを横にしたようなイメージ、というとわかりやすいかもしれません。

  • 大きさ

クラウンの中でも婦人用の小型のクラウンを「コロネット(Coronet)」、またはティアラと呼ぶことも。

コロネットは「小さな王冠」の意であり、コロネットやティアラもクラウンの一種。

つまり、男性用の冠がクラウン、女性用の冠だからティアラと簡単に二分できるものではないのです。

エリザベスII世の母にあたるエリザベス王妃のために作られた「The Queen Mother’s Crown(エリザベス王妃冠)」も、その形状・大きさからティアラではなくクラウンと名付けられています。

「クラウン・ジュエル」、「レガリア」とは何を指す?

王冠や笏(しゃく)、宝珠(ほうじゅ)など、王権を表す宝飾品を「クラウン・ジュエル(Crown Jewels)」、または「レガリア(Regalia)」と呼びます。

君主を象徴する宝飾品の総称であり、戴冠式では王冠以外にもさまざまなクラウン・ジュエルが用いられます。

そのひとつがヴィヴィアン・ウエストウッドやハリスツイードといったブランドのロゴモチーフになった「宝珠(オーブ)」。

 

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1661年、チャールズⅡ世の戴冠式のために、王室専属の金細工師であったロバート・ヴァイナーが製作。

以降、指輪や王笏(おうしゃく,セプター)と並んで、戴冠式の際に新王が大主教から受け取る宝物のひとつとして、必ず用いられてきたのです。

王笏は同じく1661年に製作された「十字架の王笏」と、平和の象徴である鳩があしらわれた「鳩の王笏」がそれぞれ授けられます。

戴冠式で用いられる王冠はどれ?

イギリス王室が保有する王冠。

黒太子のルビーで有名な、最も象徴的である「大英帝国王冠」のほか、「聖エドワード王冠」に「メアリー王妃冠」があります。

いずれもイギリス王室と深い関係にあるクラウン・ジュエル。
戴冠式で用いられるのはどの王冠なのでしょうか。

「聖エドワード王冠」と「メアリー王妃冠」


チャールズⅢ世の戴冠式で用いられるのは「聖エドワード王冠」。

 

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戴冠式でのみ用いられる王冠であり、1953年6月2日のエリザベスⅡ世の戴冠式でも用いられました。

カミラ王妃には「メアリー王妃冠」が与えられます。

戴冠式後、ウェストミンスター寺院を出る際には「大英帝国王冠」に取り替え。


パレードではチャールズⅢ世は「聖エドワード王冠」ではなく、より軽い「大英帝国王冠」を着用します。

POINT

  • クラウンとティアラの違いは形状と大きさ
  • クラウンの中で婦人用の小さなものはコロネット、またはティアラと呼ばれる
  • クラウン・ジュエルとは王冠や笏、宝珠など、王権を表す宝飾品
  • 戴冠式では「大英帝国王冠」「聖エドワード王冠」「メアリー王妃冠」の3種類のクラウンが使用

70年ぶりとなる戴冠式。

実は「聖エドワード王冠」は今回の戴冠式に備えて、サイズ直しのためロンドン塔の展示から外されていたのだとか。

クラウン・ジュエルがみられる希少な機会、それぞれの王冠の違いに注視してみてはいかがでしょう。

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