ひとつの宝石に一色という決まりはなく、複数の色が見えることがあります。
ぱっきりと分かれたものから、絵の具のように混ざり合ったもの。
斑点が浮き出たものなど、その種類はさまざまです。
ブラッドストーン(blood stone)もその一種で、緑に赤といったある季節によく見る色合わせの宝石。
ブラッドストーンは彫刻やカメオに仕立てられることが多く、ギリシャ神話にも登場する歴史の古い宝石であることはご存知でしょうか。
今回はブラッドストーンの基礎知識についてお届けします。
ブラッドストーンの意味、和名、石言葉は?
ブラッドストーンの意味と和名
濃い緑に映える赤い斑点が、まるで石に落ちた血のように見えるブラッドストーン。
文字通り血を意味する「blood」と石の「stone」から成る語です。
別名「ヘリオトロープ(heliotrope)」。
ギリシャ語で太陽神、または太陽を表す「ヘーリオス(helios)」と〜の方向に向くものという意味の「トゥロウプ(trope)」が由来。
ヘリオトロープは花の名前でもあり、甘い香りを放つ紫や白の小さな花を咲かせるハーブの一種。
宝石と花では印象が異なるのも面白いですね。
モース硬度は7、三方晶系(低温型)、または六方晶系(高温型)の酸化鉱物です。
ブラッドストーンの和名は「血石(けっせき)」。
別名は血玉髄、または血碧玉。
ドイツではヘマタイトを血石を意味する「ブルトシュタイン(blutstein)」と呼ぶため、混同しないように注意してくださいね。
関連記事:宝石の和名が知りたい!名付けに役立つ宝石の名前や漢字のヒント一覧
ブラッドストーンの石言葉
ブラッドストーンの石言葉は「勇気・救済」。
戦場での怪我を防ぐため、兵士がお守りがわりに身につけていたと伝えられています。
3月の誕生石
ブラッドストーンは3月の誕生石。
アクアマリン、コーラル(珊瑚)にブラッドストーンと、3月の誕生石はバリエーション豊かですね。
関連記事:知っておきたい!誕生石の一覧と意味(石名の英語表記つき)
ブラッドストーンの赤色の正体は?ジャスパーの一種?
ブラッドストーンとイエス・キリストの逸話
宝石には逸話がつきもの。
紀元前から宝石が人々の生活に密接であったことを考えると、それも特別なことではありませんね。
ブラッドストーンにもまた、興味深い逸話があります。
それは「赤い斑点の正体は血が染み込んでできた」というもの。
でもいったい誰の血なのでしょう。
その人物とは誰もが一度は聞いたことがある、イエス・キリストです。
キリストが十字架に磔にされた際、足元のジャスパーに滴った血が赤い斑点となり、ブラッドストーンが誕生したと伝えられています。
つまり、ブラッドストーンが生まれたのは約2000年ほど前ということでしょうか。
しかし、実はブラッドストーンはラピスラズリやターコイズと並ぶ最古の宝石のひとつなのです。
現在、宝石が発見された時代で、最も古いのは紀元前7000年あたり。
この頃にはすでにラピスラズリやメノウが流通しており、そうなるとこの逸話が生まれた年代とは少し時代が異なりますよね。
また、別の角度からみてみましょう。
鉱物の生成にかかる時間は途方もなく、何千年、何億年もの時間がかかります。
キリストの処刑は紀元30年と伝えられているため、やはり空想上のお話と捉えることができるでしょう。
ほかにも血が生み出した宝石として伝えられるものに珊瑚があります。
こうした宝石にまつわる逸話の起源をたどってみるのも面白いかもしれませんね。
ブラッドストーンは石英の仲間
血でないなら、ブラッドストーンの赤い斑点とは一体何なのでしょう。
その正体は酸化鉄。
この酸化鉄を主要成分とする鉱物にヘマタイトがあり、黒から銀、灰色や赤褐色まで色のバリエーションも豊富です。
ブラッドストーンの緑の部分はジャスパーで、石英と呼ばれる鉱物の一種。
つまり水晶やアゲートと同じ鉱物で、アメシストやシトリンも仲間です。
しかし、透明石の印象が強いアメシストやシトリンと仲間と言われても、なかなか結びつきませんよね。
石英に不純物が一定量以上含まれると不透明なジャスパーに。
ジャスパーのなかでも緑に赤い斑点の石の組み合わせをブラッドストーンと呼びます。
現在では別の色の組み合わせでもブラッドストーンと称し販売されることがありますが、国際的に定義されているものは緑に赤の組み合わせ。
取り扱い時の注意点は?
硬度は7と高いのですが、剥離しやすい性質を持っているので衝撃には十分注意しましょう。
超音波洗浄器も避けてくださいね。
POINT
- ラピス、メノウと並ぶ、最も古い宝石のひとつ
- ブラッドストーンの赤い斑点の正体は酸化鉄
- 緑の部分は石英の仲間であるジャスパー
- 衝撃により剥離の恐れあり。超音波洗浄器も避けて
【あわせて読みたい】3月の誕生石アクアマリン、珊瑚の魅力にも触れてみてくださいね。
この記事を読んだ人は、こんな記事も読んでいます

大学卒業後、ジュエリー専門学校にてメイキングとデザインを学ぶ。ジュエリーセレクトショップ・百貨店にて販売員経験あり。あなたとジュエリー・アクセサリーとの距離を縮める記事をお届けします。