コラム

【宝石の逸話】世界最大級のカリナン・ダイヤモンド。イギリスとの関係と大きさは?

かつて世界最大のダイヤモンドと謳われたカリナン・ダイヤモンド(The Cullinan Diamond)

厳密には分割されたひとつ、カリナンⅠがカット済みのダイヤモンドの中で最大であったのですが、現在は世界で三番目(2022年10月19日時点)。

そのカリナンは元は3,106ctもの大きな原石で、1907年に合計105個のダイヤモンドに分割。

今回はカリナン・ダイヤモンドについて。
カットに至った経緯やイギリス王室との関係、名のあるカリナンの特徴をお届けします。

カリナンの名前の由来と原石発見からカットまで

カリナンの原産国と由来

原産国は南アフリカ共和国
1905年にカリナン鉱山にて産出。

1902年に開鉱したカリナン鉱山は世界最大の宝の山とも称され、最初のダイヤモンド産出から現在に至るまで、主要な宝石を産出し続けています。

実はカリナンは鉱山名ではなく人名に因んでつけられた名前。

2005年まではプレミア鉱山であったカリナン鉱山。
鉱山の開祖、トーマス・カリナン(Thomas Cullinan)の名が由来となったのです。

分割されたカリナン

大きな原石が産出すると、その大きさをできるだけ損なわないようカットされる。

多くの宝石がそのようにカットされるものと思いますよね。

しかし、原石の状態によっては細かく分割されたり、反対に美しさを引き出すために総重量が損なわれることを承知でカットされることもあります。

もちろん、カットを施されず原石のまま博物館の所蔵となったり、宝石によってはコレクションとしての需要もありますが、ダイヤモンドとなると基本はカットが行われます。

カリナンも例外ではなく、結果的に大きな9つの塊と96個のダイヤモンドに分割されました。

1907年11月9日、産出した土地であるトランズバール政府から、イギリスのエドワードⅦ世に献上。

その翌年、1908年にオランダはアムステルダムのアッシャー社に研磨を依頼。

エドワードⅦ世がアッシャー社を指名したのは、カリナン以前世界最大ダイヤモンドであった「エクセルシオール(The Excelsior)」のカット実績があったからと伝えられています。

イギリス王室所有のⅠ〜Ⅸまでのカリナン

黒太子のルビーをはじめとする、数々の秘宝を所有するイギリス王室。

名のあるⅠ〜Ⅸまでのカリナンすべてが現在イギリス王室、または王族個人が所有しています。

それぞれのカラットとカット、現在どのような状態であるのかをご紹介。

カリナンⅠ(530.2ct)

 

この投稿をInstagramで見る

 

The Royal Family(@theroyalfamily)がシェアした投稿


カットはペアシェイプ

アフリカの巨星(Great Star of Africa)」とも呼ばれ、カット済みのダイヤモンドの中で世界第三位の大きさ。

イギリス王室の王笏(おうしゃく:君主が持つ象徴的かつ装飾的な杖)のセンターストーンとして留められています。

ちょうどハートに見える部分のダイヤモンドがカリナンⅠ。

先端部分を下に、丸みのある部分を上にしてセッティング。

カリナンⅡ(317.4ct)

カットはクッション

ロンドン塔に多く眠る財宝のひとつである王冠。

カリナンⅡはその王冠にセンターストーンとして嵌められています。

王冠に留められる前にはブローチ、あるいはペンダントとして使用されていた形跡があります。

それを証明するのはダイヤモンドの両端にある二つの輪。

カリナンⅢ(94.4ct)

 

この投稿をInstagramで見る

 

The Royal Family(@theroyalfamily)がシェアした投稿


カリナンⅠと同じくカットはペアシェイプ

エリザベスⅡ世の祖母にあたるメアリー王妃の王冠に留められています。

王冠としてだけでなく、取り外してペンダント・ブローチのように使用することもできるマルチウェイジュエリー。

次に紹介するカリナンⅣと組みわせて使用でき、メアリー王妃の肖像画でも確認でき、エリザベスⅡ世も身につけていました。

カリナンⅣ(63.3ct)

カリナンⅡと同じくカットはクッション

カリナンⅢと同じくメアリー王妃の王冠を飾る宝石のひとつで、横帯に取り付けられていました。

ブローチとして身に付ける際はクッションカットのカリナンⅣにペアシェイプのカリナンⅢがぶら下がる形となります。

このブローチは「グラニーズ・チップス」とも呼ばれます。

メアリー王妃から孫であるエリザベスⅡ世の手に渡ったことで「おばあさんのかけら」を意味する名前がつけられたと伝えられています。

カリナンⅤ(18.5ct)

 

この投稿をInstagramで見る

 

The Royal Family(@theroyalfamily)がシェアした投稿


カットはハートシェイプ

元々は三角ペアシェイプであったものをリカット。

1937年にエリザベス王妃(クイーン・マザー、エリザベスⅡ世の母)の王冠を作る際、コイヌール・ダイヤモンドをセッティングするため、代わりとしてメアリー王妃の王冠の飾り輪につけられました。

現在はブローチをかたどる宝石のひとつとして飾られています。

カリナンⅥ(11.5ct)

カットはマーキース
エドワードⅦ世からアレクサンドラ王妃に贈られたもの。

エリザベス女王が最も好んで身につけたカリナンであり、ダイヤモンドとエメラルドがあしらわれたネックレスのペンダント部分に使用。

カリナンⅦ(8.8ct)

カットはマーキース

カリナンⅧと合わせてひとつのブローチにセッティングされています。
カリナンⅦがセンターストーン。

カリナンⅧ(6.8ct)

カットはレクタングル・クッション

カリナンⅨ(4.39ct)

カリナンⅠ、Ⅲに続き、みっつめのペアシェイプ

メアリー王妃のために制作されたリングに飾られています。

POINT

  • カリナン・ダイヤモンドの原石は世界最大級
  • カリナンの名は鉱山の開祖であるトーマス・カリナン(Thomas Cullinan)から
  • カリナンⅠは世界三番目の大きさ(2022年10月19日時点)
  • 9つの大きな塊と96個の小さなダイヤモンドに分割、4.39ct以上の9つは現在イギリス王室が所有

【あわせて読みたい】世界最大級の宝石をもっと知りたいなら。

【宝石の逸話】インドの星:世界最大級のスター・サファイア