コラム

【宝石の逸話】黒太子のルビー:クラウン・ジュエルの赤い宝石

その姿かたちの美しさや神秘的な色で、「特別な力を持つ」と信じられてきた宝石。

歴史を彩った数々の宝石のうち、有名なイギリスの「黒太子のルビー」は、ルビーらしい品のある赤で人々を魅了し続けてきました。

しかし、長年ルビーだと信じられてきたこの「黒太子のルビー」には秘密が隠されていたのです。

今回は「黒太子のルビー」にまつわる逸話をお届けします。

「黒太子のルビー」とはどんな宝石?

「黒太子(こくたいし)のルビー」は、英語で「Black Prince’s Ruby」
英国の王権を象徴するクラウン・ジュエルであり、「黒太子のルビー」は王冠の前面「クロスパティー」にセッティング。

 

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ルビーは原石のかたちを活かし表面のみを磨いているため、輝きよりも艶やかな色味や大きさが強調されています。

レッド・スピネルだった「黒太子のルビー」

現在はイギリス・ロンドン塔の宝物館に展示されている「黒太子のルビー」。
ヨーロッパでは、ルビーは威厳と勇気を授ける宝石と信じられてきました。

しかし、「黒太子のルビー」はルビーではなかったのです。

エリザベス女王の「チムール・ルビー」やエカテリーナ一世の王冠のルビー。
そして「黒太子のルビー」などの歴史を彩ったルビーは、実はレッド・スピネル

長い間ルビーだと誤解されていたため、ルビーやサファイアのように歴史にはあまり登場しません。
それもあってか、スピネルには「ルビーの偽物」といったイメージを持たれる方も。

実際、鑑別技術が発達するまで、宝石は色で見分けられることがほとんどだったため、赤い宝石はルビー、青い宝石はサファイアだとみなされていたのです。

「黒太子のルビー」にまつわる3つの逸話

国の宝に数えられているルビーのうち、レッド・スピネルだと判明したものは現在でもその歴史を尊重して「ルビー」と呼ばれています

ここでは「黒太子のルビー」の歴史にまつわる逸話を3つご紹介します。

大英帝国王冠のルビーとレッド・スピネル

3,000を超えるダイヤモンドに、サファイア、エメラルド、パールがふんだんにあしらわれた大英帝国王冠。

「ルビーと勘違いされていたということは、王冠にはルビーがセッティングされていない」

そう思われる方も多いのですが、よく目を凝らしてみてください。

 

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じつは「黒太子のルビー」の上部には小さなルビーがはめ込まれています

スピネルだった、ということばかりに注目されがちですが、ルビーとスピネル、ふたつの鮮やかな赤を楽しめる貴重なクラウン・ジュエルなのです。

カリナンⅡと聖スチュワート・サファイア

この王冠には「黒太子のルビー」以外にも有名な宝石がセッティングされています。

まずひとつは「カリナンⅡ」
3,106ctsの原石を「カリナンⅠ〜Ⅸ」の9つと96個の小さなダイヤモンドに分けた「カリナン・ダイヤモンド」のひとつで、クッションカットが施されています。

 

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317.4ctsとカリナンのなかでも2番目の大きさで、王冠にセッティングされる以前はブローチ、あるいはペンダントとして使われていました。

つぎに「聖スチュワート・サファイア」
エドワード懺悔王(または証聖王)が使用していたリングから取ったサファイアと言われており、王冠の頂点のクロスパティー中央にセッティングされています。

バックバンドの「スチュアート・サファイア」は104カラット。

 

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「黒太子のルビー」の名前の由来

黒太子とは、イングランドの王太子であったエドワード王太子のあだ名。
優秀な軍人であったエドワード王太子が、常に黒い鎧を着ていたから黒太子と呼ばれるようになったなど様々な説があります。

エドワード王太子が手に入れたルビーだから「黒太子のルビー」と呼ばれているのですね。
14世紀半ばに手に入れられたこのルビーは、のちに兜、王冠へとかたちを変えていきます。

スピネルのなかでも希少な色味で産出量も限られているレッド・スピネル。
上質なものはルビーに匹敵する色味と輝きを兼ね備えているとか。

「黒太子のルビー」はなかなか見ることのできないサイズ感ということもあり、一生に一度は見たいものですね。

POINT

  • 「黒太子のルビー」を含む有名なルビーにはレッド・スピネルだったものも
  • ルビーとスピネルは、ミャンマー・スリランカ・タイと産出地も近い
  • レッド・スピネルは産出量も少なく、品質が良いものは上質な赤を楽しめる

ルビーの記事はぜひこちらもご覧ください。

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