存在そのものが身に付ける人を、その人の行く先を照らしてくれるジュエリー。
単体でも圧倒的な存在感を放ちますが、ジュエリーは身につける人あってこそ輝きを増しますね。
だからこそ人々の関心や流行、環境とさまざまな側面からの影響を受け、時代を反映し続けてきました。
特に激動の時代の中、ジュエリーを生み出すことで希望を与えてきたのはモーブッサン。
【ジュエリーブランドの名品】第八回目は「MAUBOUSSIN(モーブッサン)」。
グランサンクのひとつに数えられる、歴史あるメゾンの背景とジュエリーに迫ります。
時代を映す、信念を宿す。モーブッサンとフランスの歩み
この投稿をInstagramで見る
反骨精神が宿るものや、誰かから誰かへの愛が語られるもの。
金属の光沢や宝石の色彩など、ジュエリーで表現されるメッセージは表面的なデザインに留まりません。
もちろんモーブッサンも、揺るぎない信念のもと誕生したブランドでした。
1820年代のフランスとモーブッサン
1827年にサン・マルタン港にほど近い、パリのグルヌタ通りに創業したモーブッサン。
映画「アメリ」にも登場するサン・マルタン運河は個性豊かなお店が立ち並ぶことで知られていますが、モーブッサン創業当時には現在のような華やかさはなかった土地です。
というのも1820〜30年代のフランスは激動の時代。
フランス革命により崩れた王政、コレラの蔓延。
産業革命が盛んなイギリスに比べ、その時代のフランスは工業面で大幅な遅れを取っていました。
しかし、その中にも一筋の光が。
ナポレオンの治世時に、戦利品としてヨーロッパ各国から数々の美術品が集められたり、カンパーナ侯爵の個人コレクションの購入を行うなど美術品への関心が高まったのです。
美術館に展示された数々の金工細工に心を奪われた宝飾職人たち。
その様子を知ることはできませんが、技巧が凝らされたギリシャやローマの金細工や銀細工を目にした際の感動の眼差しが、今私たちが手にしているジュエリーを形作っていると考えると胸が高まりますよね。
ムッシュ・ロシェとジャン=バプティスト・ヌーリー
この投稿をInstagramで見る
約200年。
ハイジュエラーの中でも長い歴史を持つモーブッサン。
実は最初からモーブッサンの名を掲げていたのではありません。
はじまりは一人の宝飾職人から。
フランス人「Monsieur Rocher(ムッシュ・ロシェ)」がパリにアトリエを構えたことからブランドがスタートしました。
ムッシュはフランスにおいての男性への敬称。
本名を明らかにしていないというミステリアスさにより興味を惹かれますね。
その後、いとこであり後継者の「ジャン=バプティスト・ヌーリー」が経営に参加。
ヌーリーの手腕により、ブランドの知名度は瞬く間に上がりました。
1873年ウィーン万国博覧会、1878年パリ万国博覧会でブロンズメダルを受賞。
世界中にその名を知られるのは1931年。
それまでもパリ万国装飾美術博覧会でゴールドメダルを受賞するなどの功績を残してきましたが、
パリの植民地博覧会でのダイヤモンドの展示会がきっかけです。
1910〜30年代はアール・デコの時代。
この時代エキゾチックな雰囲気を醸すカラーストーンの魅力の高まりを受け、数々のカラーストーンジュエリーが生み出されました。
その流れのなか、博覧会を通してモーブッサンのカラーストーンジュエリーが評価されたのです。
ムッシュ・ロシェは創業最初からカラーストーンを使用しており、カラーストーンの価値を高めたジュエラーとも言われています。
モーブッサンを代表する名品たち
ハイジュエラーであるのにも関わらず、「手の届くラグジュアリー」を体現しているモーブッサン。
カラーストーンを使用したのも、安価であったことがひとつの理由ではないかとされています。
大胆なデザインは綿密に紡がれ、奥行きのあるジュエリーへ。
モーブッサンを象徴する名品を三つ、ご紹介します。
チャンス・オブ・ラブ(chance of love)
この投稿をInstagramで見る
四つ葉のクローバーはチャンスとハーモニーの象徴。
散りばめられたダイヤモンドは輝きと純粋さを。
その名にふさわしい、愛とチャンスを表現した「チャンス・オブ・ラブ」。
愛を掲げる「チャンス・オブ・ラブ」のリングはエンゲージリングとしても人気のアイテム。
幅広のデザインですが、アームは割腕なので繊細に身につけられるのも嬉しい。
エトワール(étoile)
この投稿をInstagramで見る
モーブッサンのロゴマークでもある星(エトワール)を用いた「エトワール」。
流れ星が走り去る瞬間を留めておける贅沢さに、大人の余裕を感じますね。
「エトワール・ディヴィン」はシャープな知性を。
この投稿をInstagramで見る
リングのアーム部分にセラミックを採用した「エトワール・デモン」はしなやかな感性を讃えています。
アブソリュモン・トア(absolument-toi)
この投稿をInstagramで見る
2018年、カラーストーンと向き合い続けたモーブッサンが生み出した「アブソリュモン・トア」。
カラーストーンの周囲をエナメルで囲い、色のコントラストで新しい表情を引き出しました。
ブラックのフレームのおかげで、カラーストーンの色味がぐっと引き締まりクールな印象。
格別な色と存在感を味わいたい上級者に贈る、モーブッサンからの新たなギフトです。
ハイクオリティなカラーストーンを扱うならここ!と、現在までその信頼が脈々と受け継がれているモーブッサン。
ハイジュエラーなのに数万円から手にできるジュエリーを扱っているのも嬉しいですよね。
ジュエリーに数々の革命をもたらしたモーブッサンならではのクリエイションは、譲れない信念と新しさを追い求める方に。
POINT
- グラン・サンクのひとつで、約200年の歴史を持つモーブッサン
- 1820年代のフランス激動の時代に誕生した、カラーストーンの扱いに長けたブランド
- エンゲージリングとしても高い人気を誇る「チャンス・オブ・ラブ」
- ハイジュエラーには珍しく、リーズナブルな価格帯も展開
【あわせて読みたい】ジュエリーブランドの名品、バックナンバーはこちら!
第一回目:TASAKI
第二回目:TIFFANY&CO.
第三回目:Cartier
第四回目:Van Cleef & Alpers
第五回目:BVLGARI
第六回目:NIESSING
第七回目:BOUCHERON
この記事を読んだ人は、こんな記事も読んでいます
大学卒業後、ジュエリー専門学校にてメイキングとデザインを学ぶ。ジュエリーセレクトショップ・百貨店にて販売員経験あり。あなたとジュエリー・アクセサリーとの距離を縮める記事をお届けします。