ダイヤモンドや色石を美しくみせるため、デザイナーや職人たちは世代を超えてさまざまな技巧を凝らしてきました。
宝石のカットであったり、使用する地金であったり。
石留めでそれを叶えたひとつのブランドがニーシング。
ブランドのシグネチャである「テンションセッティング」は、地金のテンション(張力)だけでダイヤモンドを留めるというもの。
【ジュエリーブランドの名品】第六回目は「NIESSING(ニーシング)」。
テンションセッティングとブランドを育んだ土地、ドイツのバウハウスとは?
ニーシングの歴史と技巧。テンションセッティングとは
結婚指輪・婚約指輪を探したことがあるなら、ニーシングの特徴的な指輪を目にしたことがあるかもしれません。
それほど印象に強く残るテンションセッティングですが、デザインは極めてシンプル。
装飾を削ぎ落としたモダンさは、バウハウスの存在無しには語れません。
では「バウハウス」とは何を指すのでしょう。
ニーシングとバウハウス
「バウハウス(Bauhaus)」はドイツのワイマールに設立された学校の名称。
美術から技術、建築、工芸とデザインを境界なく学べる機関として設立されました。
「形態は機能に従う」という理念のもと、現代のモダンデザインを形作る存在となったのです。
そのルーツは、産業革命以降の機械化がデザインの分野にも影響を及ぼしていく流れの中で起こった運動「アーツ・アンド・クラフツ」にあるとされています。
要は、機械化が進む社会の中で、手仕事のものづくりの良さにもう一度目を向けてみようということでした。
産業革命により品質が落ち、粗悪品が多く出回るようになった工業製品に対して状況を批判するだけでなく、美術と工芸を生活に組み込み、造形への見直しを図る流れがバウハウス設立に大きな影響を与えたのです。
バウハウスがあった期間は1919年から1933年と短いものの、現代デザインに残した影響は計り知れません。
ニーシングの創業は1873年。
バウハウス以前の創業ですが、20世紀以降のニーシングはその明瞭な形式の美しさを広めたバウハウスの芸術スタイルの存在抜きには語れません。
テンションセッティングとは
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ミニマムでモダン。
ニーシングの革新的で知性を感じるジュエリーは、卓越した技術力があってこそ。
その技術力が現れた、ブランドの顔ともいえるシリーズが「ニーシング・シュパンリング」。
絶妙なテンション(張力)で留められたダイヤモンドは、宙に浮き光を集めることでダイヤモンドの輝きを引き出します。
爪を用いるのでもなく、石に穴を開けるのでもない。
まったく新しい石留めの形は、ジュエリーの枠を超えて美術品としても認められています。
2000年、ドイツの高等裁判所にて著作権を獲得。
ドイツを中心に4つの美術館で、美術品として展示されています。
テンションでダイヤモンドを留める技術は誰にでもできるものではなく、豊富な知識と経験を積んだ職人のみが可能な技。
選べるダイヤモンドのカラットやアームの幅、形状の豊富さも、それを叶える職人の技があってこそなのです。
ニーシングを代表する名品たち
ダイヤモンドを讃えているかのような「ニーシング・シュパンリング」。
アームの断面の形状、石を留める部分の高さによって名称を変えます。
ラウンドやハイエンドなど、ニーシングを代表する名品たちをご紹介。
ラウンド(ROUND)
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「ニーシング・シュパンリング」シリーズの中で、一番最初に開発されたラウンド。
アームの断面が真円の筒型で、幅が変わらないデザインはアイコニック。
ニーシングの哲学をそのまま写したフォルムは、ボリューム感たっぷり。
30年以上の時を経ても変わらない人気を得ています。
スリムなフォルムのエスシリーズも展開。
ハイエンド(HIGHEND)
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直線的なフォルムが力強さを生むハイエンド。
アームの断面は長方形。
ラウンドの優美さとはまた異なる堂々とした佇まいは、ダイヤモンドの魅力を一段階上に押し上げます。
ダイヤモンドの高さによって変わる立ち上がり部分を含め、どの角度から見ても楽しめるデザイン。
ラウンドと同様、エスシリーズも展開されています。
オーラ(AURA)
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ニーシングの魅力は石留めだけではありません。
世界トップレベルの治金術は、イエロー、ピンクやホワイトゴールドの枠に止まらない12色ものカラーゴールドを生み出しました。
金属の配合だけでなく、温度や鍛金プロセスの差異によって生み出される色味の違いは、まさに芸術品。
そのひとつがオーラ。
レッドからグレーゴールドへと移ろうグラデーションは、従来のゴールドにはない色香を感じさせてくれます。
ジュエリーの枠組みを超えた魅力は、いつだって新鮮な美しさをもたらしてくれます。
歳を重ねても褪せることのないジュエリーをお探しなら、きっとニーシングはあなたの生涯のパートナーとなってくれるでしょう。
POINT
- バウハウスの影響を受けたドイツを代表するハイジュエラー「ニーシング」
- テンション(張力)を用いてダイヤモンドを留める「ニーシング・シュパンリング」
- テンションセッティング以外にも、世界トップレベルの治金術が生み出すカラーゴールドが魅力
【あわせて読みたい】ジュエリーブランドの名品、バックナンバーはこちら
第一回目:TASAKI
第二回目:TIFFANY&CO.
第三回目:Cartier
第四回目:Van Cleef & Alpers
第五回目:BVLGARI
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大学卒業後、ジュエリー専門学校にてメイキングとデザインを学ぶ。ジュエリーセレクトショップ・百貨店にて販売員経験あり。あなたとジュエリー・アクセサリーとの距離を縮める記事をお届けします。