ジュエリーの基礎知識

「合成ダイヤモンド」「ラボグロウンダイヤモンド」とは?作り方や今後の市場動向

硬度10、宝石の王として誰もが知るダイヤモンド。今、その市場を騒がせているのが「合成ダイヤモンド」です。

英語では synthetic diamond、また別名として 研究室(ラボ)で製造したという意味から「ラボグロウンダイヤモンド laboratory-grown diamond/lab-grown diamond」と言われています。

天然ダイヤモンドと遜色のないクオリティを持つ「合成ダイヤモンド」が本格的に日本市場にも影響する2019年は合成ダイヤモンド元年とも言われ、ジュエリー業界でも大きな話題に。1月の国際宝飾展では合成ダイヤモンドについて数多くのセミナーが実施されていました。

「合成ダイヤモンド」「ラボグロウンダイヤモンド」とは何?製法は?見分けられる?注目ブランドや今後の市場動向は?商品を選ぶ側の私たちは何を知っておけばいい?

今回は宝飾業界の関係者にお伺いしたお話をもとに、注目の合成ダイヤモンドについてレポートしました。

合成ダイヤモンドとは?開発の歴史

合成ダイヤモンド=ラボグロウンダイヤモンドとは、科学技術により人工的に作られたダイヤモンドのこと。組成は天然と同じです。

1796年にダイヤモンドの成分が「炭素」だと解明してから、人間は長い間ダイヤモンドの合成を研究してきました。

近年では1950年代から米国のGE(ゼネラル・エレクトリック社)等が研究を重ね、工業用ダイヤモンドから1980年代には宝石品質のものへとステップアップ。

一方中国で、工業用ダイヤモンドの製造から合成ダイヤモンドの研究が進められました。
当初は宝飾用のカット技術はないので原石がインドに渡り、インドでカットされてから宝飾品として売られていたそうです。国からの援助もあってこの分野は進展、大手3社が巨大な工場で大量生産を始めて数年前から宝飾用ダイヤモンドの生産が増加。合成ダイヤモンドが本格的に流通し始めました。

合成ダイヤモンドの作り方とは?代表的な2つの製法

合成ダイヤモンドの作り方は主に2通り

天然のダイヤモンドは何億~何十億年という年月をかけて、地球深部のマントルから生成されます。グラファイト(鉛筆の芯などに使われる鉱物)にならずダイヤモンドになるのは貴重で、「美しさ」「希少性」「耐久性」を備えた宝石の代表とされます。

一方の合成ダイヤモンドは「ラボグロウン」と言われるように、わずか2週間といった短期間で製造される工業製品です。
炭素を元に人工的にダイヤモンドを作り出す製法は大きく以下の2つ。

HPHT(High Pressure,High Temperature)

高温高圧法」と呼ばれる方法。天然ダイヤモンドが出来る際のマントルを模倣して、高温に加熱した反応室で高圧をかけて作り出します。大量生産に向いています。中国の合成ダイヤモンドは主にこちらの方法とのこと。

CVD(Chemical Vapor Deposition)

化学気相蒸着法」と呼ばれる方法。メタンガスとマイクロ波を使用し、より低圧・小型の機械で生成できる方法。ダイヤモンドの種に炭素片を雪のように堆積させることで層を作っていきます。監視と制御がしやすく、後述するブランド「LIGHTBOX」はCVD法を使っています。

キュービックジルコニアと合成ダイヤモンドは何が違うの?

ちなみに模造ダイヤと呼ばれることもあるキュービックジルコニア(CZ)は、屈折率はダイヤモンドと同程度ですが組成は「二酸化ジルコニウム(+添加物)」。
合成ダイヤモンドは、化学組成も天然ダイヤモンドと全く同じ「炭素」です。

合成ダイヤモンドは見分けられる?

見分けるのが難しい合成ダイヤモンド

もともと「合成宝石」(化学的に天然鉱物と同じ特性を持つ合成品)は各種存在しており、合成ルビーも合成サファイアもあります。ただインクルージョン(内包物)の差やカットの違いなど、天然は天然らしく合成は合成らしいところがあり、ジュエリーのプロなら違いを見分けやすいポイントがあるそうです。

一方ダイヤモンドは、カット技術の発展により人間が価値を高めてきたともいえる宝石。

ダイヤモンドの採鉱・流通・加工・卸売を取り仕切る資源メジャー・デビアス(DeBeers)が原石と流通を支配して基準も決める、言わばクオリティコントロールされた宝石です。

4C」という基準をご存知の方も多いでしょう。無色透明でインクルージョンのないダイヤほど品質が高いとされます。カットも「ラウンド・ブリリアント・カット」を代表とする高度なカットが主流です。

「4C」の参考記事:ダイヤモンドの4Cとは?婚約指輪で重要なのはカット?カラット?

「カット」の参考記事:ダイヤモンドの輝きを決める「カット」!ブリリアント・カット&カットの種類は?

このレベルの高さがかえって、プロにも天然と合成の違いを見分けにくくしているそうです。なお専門的な分光器(宝石分析装置)があれば識別は可能とのこと。

0.1カラットのダイヤモンド。天然と合成を並べて見せていただきましたが、もちろん一般人の眼では全く見分けがつきません。机の上でうっかり混ざらないか大騒ぎでした!(※そのため写真が今ひとつで申し訳ございません…)

0.1カラットの天然ダイヤモンド

0.1カラットの合成ダイヤモンド

ラボグロウンダイヤモンド・ブランドが登場!

デビアスがブランド「LIGHTBOX」を立ち上げ

2018年、デビアス(傘下のElement Six社)は自らラボグロウンダイヤモンド・ブランド「LIGHTBOX(ライトボックス)」を立ち上げました。

「LIGHTBOX JEWERLY」https://lightboxjewelry.com/

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デビアスは宝飾用の合成ダイヤモンドには否定的だったと言われていますが、先に述べた中国の合成ダイヤモンドの状況をふまえ、流通の混乱を避けるためにも天然ダイヤモンドとあえて市場を切り分けていく方向に舵を切ったといえそうですね。

よりお手頃な価格帯のブランドとしてポジショニングも変え、ピンクやブルーのカラーも展開、わかりやすい均一価格。
ダイヤには「ラボグロウンダイヤモンドである」という刻印をつけているそうです。

最新情報では、GIA(米国宝石学会)では合成ダイヤモンドに対して合成(synthetic)ではなく「ラボグロウン(laboratory grown)」という表現を使い、製法などもわかる鑑定書を発行していくとのこと。

日本でも、京都の老舗宝飾企業・今与の「SHINCA」など、合成ダイヤモンドのブランドが本格化しています。

天然ダイヤモンドも調達情報がより明確に

一方、例えばティファニーは天然ダイヤモンドの原産地情報を公開し、個々のダイヤモンドにレーザーによる独自のシリアルナンバーを刻印する方法で調達の透明性を高めていきます。

ティファニー公式サイト:ダイヤモンド調達における積極的な取り組み

合成であれ、天然であれ、どんなダイヤモンドを使っているのかを明確に情報開示して差別化することが今後のブランディングの大きなポイントになっていきそうです。

合成ダイヤモンドの市場は拡大するの?

「エシカルでサステナブル」な点も注目される合成ダイヤモンド

近年、天然ダイヤモンドについては採掘にまつわる紛争地問題や労働問題、環境への影響といった課題も言われていました。

そのため合成ダイヤモンドは「ダイヤモンドの輝き」「買いやすい価格」に加え「エシカル(道徳的・倫理的)でサステナブル(持続可能)」という視点でも注目を集めています。

市場は二極化?合成ダイヤモンドは0.3~0.5カラットが主戦場に

今後の市場動向について、業界関係者の予測としては

  • ファッションアクセサリー、パーツ販売:合成ダイヤモンドが伸びるのでは
  • 婚約指輪など人生の節目のジュエリー:天然ダイヤモンドが選ばれるのでは

という方向で、二つに分かれていくのでは…とのご意見でした。

この流れは買う側の選択肢が多くなるメリットがある一方、天然と合成の混入、価格問題といった不安要素も思い当たります。

合成ダイヤモンドについては、量的な拡大は止められないようです。

中国は市場の需給に関わらず大量生産する傾向があり、カットも高価な天然ダイヤモンドであれば慎重にされるところ、合成ダイヤモンドなら歩留まりが悪くてもいいためどんどん自動カットされ、どんどん製品ができてしまう状況だとか(合成ダイヤモンドの価格は、インド人の最新情報によると今や天然の1/10だという話も!)

技術的にも進歩し、当初多かったメレダイヤ(0.01カラットなどの小粒ダイヤ)クラスからより大きなサイズ、0.3~0.5カラットクラスのダイヤモンドが増加傾向とのこと。

「スワロフスキー」のあり方は今後の参考に

現状、日本ジュエリー協会では(天然の宝石でもなく)希少性がないという点から「合成ダイヤモンドはジュエリーではない」という見解を出しています。

この先、世の中でどのような位置づけとなっていくのか経過を追いたい合成ダイヤモンドですが、今後のイメージとして一つ参考になるのが「スワロフスキー」だそうです。

スワロフスキーはオーストリア発祥のクリスタルガラスのブランドですが、独自技術も持っており、ガラスのアクセサリーとしては「スワロとその他」というほどの認識になっていますよね。

このように、ブランドの差別化をしっかりとした「合成(ラボグロウン)ダイヤモンドのブランド」と「その他(の合成ダイヤ)」という図式になる、という可能性はあるかもしれませんね。

「合成ダイヤモンド元年」以降、買う側の心がまえは?

まだまだ市場変化の渦中にある合成ダイヤモンド。
天然?合成?ブランド?ノーブランド?それはジュエリーを買う目的や着けるシーン、個人の価値観などで大きく変わります。

買う側としては選択肢が広がる中で「天然と思って買ったら合成だった?」「ラボグロウンの意味がよくわからず買ってしまって後悔…」といったモヤモヤ事態は避けたいもの。

そのためには、特にダイヤモンドに関しては、合成品やブランドが登場しているという情報を知っておきましょう。そして、天然であれ合成であれ「信頼できるお店・ブランドで購入すること」「きちんと説明を受けて納得の上で購入すること」の2点が大切だといえそうですね。

POINT

  • 合成ダイヤモンドは「ラボグロウンダイヤモンド」とも言われる工業製品
  • ファッションアクセサリーとして合成ダイヤモンドの市場は伸びそう
  • 天然であれ合成であれ、信頼できるお店やブランドで買うことが大切

取材協力・ダイヤモンド協力:株式会社オーロラ

※合成ダイヤモンドの市場動向は大きな変化期にあり、この記事は2019年3~4月時点での予測、業界関係者の私見もある点をご了承ください。最新の情報をご確認ください。