多様な色に、輝きや模様。
目に見える美しさだけでなく、発見に至るまでの物語など多様な魅力を秘めているからこそ、数多の人を惹きつける宝石。
紀元前から数千年間、歴史においても欠かせない宝石は、それぞれ固有の名前を持ちます。
その名前はどのようにつけられたのか、どのような意味があるのかを知らない方も多いのではないでしょうか。
今回は宝石の名前の由来や意味について。
性質・発見者(または産出地)・逸話に分けてご紹介します。
宝石の名前の由来その1:外観や硬さなどの性質
宝石に名をつける際に、最もスタンダードなのは外観や特性。
どんな色をしていて、どれくらい硬いのかといったものが宝石の性質があたります。
性質は大きく「色・輝き・硬さ・形」の四種類に分けられます。
色
特別な道具がなくてもまっすぐに伝わる、宝石ならではの「色」。
鑑別技術もない時代において、赤い宝石はすべてルビーとされていました。
まさにルビーは「赤」を意味するラテン語が由来であり、カイヤナイトやロードクロサイトといった宝石も、その特別な色を示すことから名付けられました。
ヒスイは鳥のカワセミと同じ「翡翠」という漢字を用いますが、羽の色が青緑であるカワセミとヒスイの色が同じであることが由来と伝えられています。
【代表的な宝石】
- ルビー:赤(ラテン語「rubeus」)
- カイヤナイト:青(ギリシャ語「kyanos」)
- ロードクロサイト:薔薇色の石(ギリシャ語「rhodon+chroma」)
- 翡翠:カワセミ(翡翠)の青緑の羽の色
輝き
色と並ぶ、宝石の魅力といえば「輝き」。
結晶構造や内包物(インクルージョン)、光の屈折によって様々な「輝き」が現れます。
サンストーンはその名の通り、古くから太陽と結び付けられてきました。
キラキラと太陽光のように輝くのは、ヘマタイトやゲーサイトといった内包物が光を反射するから。
同じ長石であるムーンストーンも、球体状に磨くと月のように内側から発光するような輝きをみせることが由来です。
【代表的な宝石】
- サンストーン:アベンチュリン効果から
- ムーンストーン:シラー効果から
硬さ
モース硬度10。
地球上のどんな宝石よりも硬いダイヤモンド。
カット技術が発達してからより稀少な宝石として扱われるようになりましたが、それ以前は圧倒的な「硬さ」ゆえに重宝されていました。
そのため、ギリシャ語で「決して屈しない」という意味が与えられ、いくつかの変化をたどりながら「diamond」と呼ばれるようになったのです。
【代表的な宝石】
- ダイヤモンド:決して屈しない(ギリシャ語「adamas」)
形
色に輝き、そして「形」。
宝石は産出時の結晶の形状にもバリエーションがあります。
ガーネットといえば「赤」の印象が強い宝石ですが、産出時の結晶がザクロの実に似ていることが名前の由来です。
スピネルは「棘」を意味するラテン語「spinam」から。
和名の「尖晶石(せんしょうせき)」も同じく、角の鋭い結晶を棘に見立てたことが由来とされています。
【代表的な宝石】
- ガーネット:種子(ラテン語「granatum」)
- スピネル:棘(ラテン語「spinam」)
宝石の名前の由来その2:発見者や産出地
宝石自身が持つ性質ではなく、「宝石の発見」自体が名前の由来となることも珍しくありません。
おおまかに分けると「発見者」と「発見された土地(産出地)」の二種類です。
発見者
どんな分野でも、発見に欠かせないのが発見者。
宝石においては、学者や収集家といった鉱物・宝石に携わる人物が宝石の名前の由来となる傾向。
その中で最も有名なものは「クンツァイト」ではないでしょうか。
宝石学者のジョージ・クンツ博士が発見したと伝えられていますが、実はフレデリック・シックラーという人物が発見者ではないかとされています。
シックラーがクンツ博士にトルマリンの変種を送ったところ、それが「クンツァイト」という新種の宝石と判明したというエピソードも残されています。
【代表的な宝石】
- クンツァイト:ジョージ・クンツ博士(宝石学者)
- プレーナイト:フォン・プレーン大佐(発見者)
- モルガナイト:J・P・モルガン(収集家)
- スギライト:杉健一(鉱山学者)
産出地
その土地でしか産出されない(と考えられていた)、稀少な宝石には産出地の名が付けられる傾向にあります。
タンザナイトは1967年、タンザニアで発見。
タンザニアのメレラニ鉱山でしか産出しないと考えられていましたが、現在は隣国であるケニアでも産出することで知られています。
【代表的な宝石】
- タンザナイト:タンザニア
- パライバ・トルマリン:ブラジル/パライバ州
宝石の名前の由来その3:逸話
性質や発見者ではなく、「逸話」が由来となった宝石もあります。
たとえばアメシスト。
深い紫をワインに喩え、身につけることで「酒に酔わない」と信じられてきました。
色からワインを連想し、お酒から身を守る意味を宝石に与えたのです。
もうひとつ有名なのがトパーズ。
トパズィオス島(現在のセントジョーンズ島)で採掘されていたトパーズ。
島が常に霧に包まれているため、たどり着くことが困難なことから「探し求める」というギリシャ語が由来となったのです。
実際にはペリドットであったと言われていますが、このように宝石の逸話から名付けられるケースもあるのです。
【代表的な宝石】
- アメシスト:酒に酔わない(ギリシャ語「amethistos」)
- トパーズ:探し求める(ギリシャ語「topazos」)
POINT
- 宝石の名前の由来はおおまかに「性質・発見者(または産出地)・逸話」に分類
- 性質は「色・輝き・硬さ・形」の四種類
- 産出地は、その土地でしか産出しない稀少な宝石に名付けられる傾向
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大学卒業後、ジュエリー専門学校にてメイキングとデザインを学ぶ。ジュエリーセレクトショップ・百貨店にて販売員経験あり。あなたとジュエリー・アクセサリーとの距離を縮める記事をお届けします。