コラム

【宝石の逸話】インドの星:世界最大級のスター・サファイア

夜空に浮かぶ星は、その輝きからさまざまなものに例えられてきました。

宝石も例外ではなく、光を当てて星が浮かび上がってきたかのような光学現象を「スター効果」、または星群や星座を意味する「アステリズム」と呼びます。

スター効果をもつ代表的な宝石にサファイアが挙げられますが、なかでも世界最大級のスター・サファイアとして知られているのが「インドの星」

今回は「インドの星」にまつわる逸話をお届けします。

「インドの星」とはどんな宝石?

スターがつく宝石の多くはダイヤモンドですが、「スター効果」をもつサファイアにもつけられます。
「スター・オブ・アジア」や「スター・オブ・ボンベイ」。
そして「インドの星」。

この「インドの星」とはどんなサファイアなのでしょう。

インドの星のカラットとカラー

「インドの星」は英語で「The Star of India」。
563.35ctで、カラーはグレイッシュブルー

比較的傷が少なく、薄いブルーにはっきりとした六条の星彩線によるスター効果が現れます。

 

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563.35ctと聞いてもピンとこない大きさですよね。
インドの星はだいたいゴルフボールほどの大きさとされています。

手の平におさまるほどの大きさですが、天然の宝石のサイズと考えるといかに希少かお分かりいただけるのではないでしょうか。

現在はどこにある?

この世界最大級のスター・サファイアは、現在アメリカで見ることができます。

1900年、モルガン財団が所有していた「インドの星」をアメリカ自然史博物館に寄贈しました。

映画「ナイトミュージアム」の舞台にもなったこのアメリカ自然史博物館には、「インドの星」以外にも「デ・ロング・ルビー」や「ミッドナイト・スター」が展示されています。

「インドの星」にまつわる3つの逸話

世界最大級のスター・サファイアである「インドの星」。
その歴史にまつわる逸話を3つご紹介します。

インドの星が発見されたのはインドではない?

インドの星と名付けられたこのスター・サファイア。
当然インドで発見されたものと思いきや、実際に発見されたのは別の国。

原産国はスリランカであり、1700年代に発見されました。

歴史的にも関係が深く、隣国であるインドとスリランカ。
なぜ「インドの星」と呼ばれるのでしょう。

それは1017年、実質的にスリランカがインドの属国であったことが影響しています。

南インドを支配していたタミル系のチョーラ朝が、ランカー島(現在のセイロン島)の大半を支配したため、欧米人には「スリランカはインドの一部」だと認識されていたのです。

発見時には支配が終わっていたのですが、根強く残ったイメージからインドの星と名付けられたのではないかと考えられています。

ちなみに、スリランカの国花は青睡蓮。
サファイアのようなブルーが特徴的な青睡蓮が国花なんて、不思議なつながりを感じますね。

ロッカーから発見されたインドの星

モルガン財団によって寄贈されてからアメリカ自然史博物館にあったインドの星ですが、1964年10月29日にその姿を消します。

「イーグル・ダイヤモンド」や「デ・ロング・スタールビー」を含む22の宝石とともに盗まれたのです。

博物館閉館後、窃盗団はあらかじめ鍵を空けておいたトイレの窓から侵入。
インドの星は警報装置がついていましたが、この時は運悪く作動せず。

そうして盗まれたインドの星は、25,000ドルの身代金と引き換えに戻ってきます(残念ながらイーグル・ダイヤモンドは未だに行方不明のまま)。

その際、インドの星が保管されていたのがマイアミのバス停留所のロッカー!
「デ・ロング・スタールビー」は電話ボックスで発見されるなど、博物館に展示されるほどの宝石たちのこの扱いには驚かずにはいられません。

世界最大のスター・サファイアは他にある?

発見されてから現在まで、「インドの星」は世界最大のスター・サファイアとして知られてきました。
しかし、それも2015年まで。

現在、世界最大のスター・サファイアは、スリランカのラトゥナプラで発見された1404.49ctのもの。
「インドの星」と同じく六条の星彩線によるスター効果が確認できます。

そのため、「インドの星」は世界で2番目の大きさのスター・サファイアとなりました。

規則正しく並んだインクルージョンから生み出されるスター効果。
普段使いできる大きさのスター・サファイアも素敵ですが、世界最大級ともなると見応えもありそうですね。

POINT

  • インドの星は563.35ct、ゴルフボールサイズほどの大きさ
  • 名前にインドとつくが、原産国はスリランカ
  • 現在は世界で2番目に大きいスター・サファイア

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