コラム

2020年、金の価格は今後どうなる?地金ジュエリーのプロに見通しを聞く

金(ゴールド)とプラチナ、どっちが高い?
若い頃からジュエリーに親しんだ大人世代ほど、プラチナ>ゴールド>シルバーという感覚があるもの。今も会員制カードなどはこの順でランクがついていますよね。
しかしながら、地金のトレンドは大きく変化。
金の価格は2015年頃にプラチナと逆転し、さらに価格上昇。現在はゴールド>プラチナで、その価格差も大きくなっているのです。

さらに2020年に入り中東情勢などの緊張化から金の価格が高騰!

ジュエリー・アクセサリー好きな方、デザイナー、販売する方…誰もが気になる「金の価格って今後どうなるの?この先も上昇していくの?」問題。

ちょっと専門的な話題ですが、みんなの疑問に応えるべく、地金ジュエリーのプロ・株式会社オーロラの林社長に現況や今後の見通しについてお伺いしてきました(※取材は2019年12月末、2020年年初の市況情報を加筆しています)。

2020年、手のひらサイズのジュエリーから、大きな世界を覗いてみましょう。

金(ゴールド)の価格が上昇している理由とは。

世界の葛藤から、求められる金=「信頼できる価値」

中期的な金の価格上昇の背景にあったのは、2018年頃から表面化してきたアメリカと中国の貿易戦争
この様子を伺いながら、世界中で「これから世界はどうなる?」「どこの国が信頼できる?」「どんな主義主張が優勢になる?」といったさまざまな思惑が渦巻いてきました。

2019年、香港で衝突が起きましたね。例えばあの衝突の様子や報道も歴史的なポイント。今の世界におけるコンフリクション(衝突、葛藤)を人々に印象づけたのでは、というのがプロの視点。

そんな時代にドルや米国債より何より、世界がどうなっても価値が信頼できる!と世界中のみんなが思っているのが「金(ゴールド)」なのです。

ちなみにリーマンショック以降、自国の資産として金の準備を増やしている各国の中央銀行Best5。

  • ロシア
  • 中国
  • カザフスタン
  • インド
  • トルコ

…「なるほどねえ」と思える国名が並びますね。

2019年末から2020年年初にかけては中東情勢の緊張化で一時的に金価格は6000円/g台に(2020年1月現在の状況)!

各国の政治的な思惑が、金の価格を下支え

このように国レベルでは、「金が安いからor高いから」ではなく政治的な思惑で金の現物を買っています。国の資産として買った金はその後市場には出回らないので、金の相場価格の下支えになっているわけです。

地球規模で見ると、宝飾用に使われる金は減っており、金の鉱山開発もされているのですが、その分は各国の購入に吸収されます。

政治的な背景があるため、よく言われる為替相場と金の相場の相関関係もその通りにならない場合もあります。現在は、円高でも円安でも金は上がり続けるという状況なのだそうです。

なお日本の金の保有率は資産全体のわずか2.4%!(米国債などが多いそうです。)
これはもちろん日米の関係性といった理由も大きいですが、国の立ち位置や意識の違いもあるかもしれません。大陸に生きる人々は「いざとなれば現物を持って逃げる」という発想が強いのですが、日本は島国ですからね。

2020年も金(ゴールド)の価格は上がる⁈

さまざまな心理や国民性からも金は人気?

また人間の心理には「株式や債券などの資産バブルへの警戒心」があります。
株式相場が上昇しても、人は、株価上昇!と喜ぶ一方で「上がったということはいつか落ちるんじゃないか…」という不安も持つもの。
資産運用のリスク分散策のひとつとして、金も買っておこうという心理が働くわけです。

人間社会の資産の中で、世界中どこへいってもその価値がわかってもらえるのは金だけ。物理的な現物があり通貨であるという点も大きいでしょう。

さらに、中国・インド・東南アジアなど、人口も多く成長が期待できる国々は嗜好としても基本的に「金好き」。

2020年に入り、中東情勢など国際情勢波乱への不安も高まっています。

さまざまな要因を考えても、2020年も金の価格は下がる要因があまりなく、上がる可能性の方が大きいというのがプロの予想です。

プラチナの価格は産業の動向にも関わる

いっぽうプラチナは、金以上に希少性の高い貴金属ですが、実は工業用のニーズが高い(6割程度)金属。
自動車のディーゼルエンジンの触媒等にも使われます。
ディーゼル車が減少し、電気自動車の台頭など自動車業界も世代交代の渦中にある現代、自動車用途などでのプラチナの使用量は減少しているんですね。
ならば、採掘量も減らせばいいのでは?と思うところですが、プラチナを採掘する時一緒に採れるのがパラジウム。このパラジウムが高価なので、鉱山主は採掘量を減らさないのだそうです。

プラチナはこのように産業動向に影響されるため、価格が景気に左右されやすい側面があります。通貨の面をも持つ金とは少し性格が異なる地金といえるでしょう。

ゴールドジュエリーは、サステナブル視点でも面白い?

ジュエリーはサステナブル。その中でも興味深い「金」の魅力

2020年、ますます金の価格は高くなる?ジュエリー欲しいのにどうしよう…と考えたあなた。それでもお気に入りのゴールドジュエリーなら、手に入れてもいいかもしれません。

金は、長期的に見て価値の目減りが少ない点が魅力。

十分身に着けて楽しんだ後に手放すとしても、金は重量換算の相場価格(9割程度)で買い取っていただけるケースが多いのです。
もし金の価格が現在よりさらに上昇していた場合は、ほとんどマイナスがないかプラスになる可能性も?!
※石は、ダイヤモンドであっても意外と低評価になるものが多いのでご留意を。

ジュエリーは、そもそも「サステナブル(持続可能)」な存在。サステナブル志向は今後の社会のトレンドです。

中でも金を使ったジュエリーは、サステナブルな資産としての楽しみも持ちながら愛用できます。
宇宙・地球から価値を託されたと考え、愛用してまた次の世代に渡していくのもジュエリーを愛する醍醐味かもしれませんね。

POINT

  • 国際情勢、政治的な思惑が現在の金の価格に影響している
  • 2020年も金の価格は強含みとの予測
  • ゴールドジュエリーは「サステナブル」視点でも魅力的かも

いかがでしたか?金やジュエリーは、宇宙や地球、歴史、世界の政治経済、人々の心理や思惑とつながっている点も奥深いです。

取材協力:株式会社オーロラ

本記事はあくまで2020年市況の「予想」であり、今後の金価格を保証するものではありません。

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