コラム

貴重品とファッションを考える──「ポケット」「サコッシュ」「シャトレーヌ」の可能性

この度の熊本地震により被害に遭われた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。一日も早く、皆様の落ち着いた日常が戻りますようお祈りいたします。

今回の災害では、改めて「貴重品を身につけておくことの大切さ」が浮き彫りになったように思います。

とっさの避難の際、荷物をまとめる余裕はなくても、身につけているものであれば失わずに済みます。日頃から「これだけは肌身離さず」というものを決めておくことは、防災の基本のひとつなのかもしれません。

今回は「貴重品を身につけるアイディア」。そのヒントとなりそうな3つのアイテム──「ポケット」「サコッシュ」「シャトレーヌ」を探りつつ今後の可能性を考えてみました。

現代の貴重品は、スマホ・鍵・キャッシュレス化によって少しずつ姿を変えています。それを身につける手段として、「ポケット」「サコッシュ」「シャトレーヌ」という3つのアイテムに、それぞれ異なる可能性のヒントがあります。

現代における「貴重品」とは?

「肌身離さず」──貴重品の定義と時代の変化

まず、現代における「貴重品」とは、具体的に何を指すのでしょうか?

無印良品が実施した防災アンケートでは、「自分にとっての貴重品(持っていなくてはいけない物)」として【現金・鍵・携帯電話】を決まったポケットに入れているという声が寄せられています。

また、子ども向けサイトニフティキッズ」が小中学生を対象に行った調査でも、避難時に持っていくものの1位は【スマートフォン・携帯電話】でした。

時代が変わっても、身につけたいものの核はそう大きくは変わらないのかもしれません。

一方で、変化している部分もあります。キャッシュレス決済の普及により、普段は現金や財布を持ち歩かないという人が増えているという指摘もありますよね。

経済産業省でも災害時にキャッシュレス決済を利用できる環境の整備が進められているとのことで、「必ず現金・財布を持つ」という前提そのものが、少しずつゆるやかに変わりつつあるようです。

スマホ(携帯電話)・家の鍵・車のキー】——これらは今も昔も変わらぬ必需品ですが、「財布」の立ち位置だけは、時代とともに揺れ動いているように感じます。

こうした「現代の貴重品」を、私たちはどう身につけていけばよいのでしょうか。

すでにリュックでの通勤などは一般化していますが、より「肌身離さず」「仕事中でも」貴重品を身につけるアイディアとは?

今回はこれまでファッション界で生まれてきた3つのアイテムから、今後の可能性を考えてみたいと思います。

1. ポケット

そもそも、ポケットとは?

ポケットとは、衣服の表面に小さな布を縫い付けて袋状にした、物を入れるための部分のことです。

語源は、中世英語の「poket」、さらに遡るとアングロ・ノルマン語の「pokete」に由来するとされ、「小さな袋」を意味する言葉から派生したといわれています。

もともとは独立した小さな袋を紐で腰から下げていたものが、やがて衣服そのものに縫い付けられるようになった、というのがポケットの成り立ちです。

レディスファッションのポケット問題

このごく身近な収納こそ、実は改善の余地がまだまだ残っている場所ではないでしょうか。

筆者がファッションECのユーザーレビューを見ていると、「ポケットがあればもっと良かったのに…」という声を意外とよく目にします。

特にメンズウェアに比べて、レディスの服はポケットが少ない、あるいは飾りとしてはいいけれど浅すぎたりで実用には向かない、といったケースが見受けられます。

デザイン性を損なわずに機能を融合させたポケット──ここには、まだ描ききれていない可能性があるような気がします。

デザイナーの皆様の腕のみせどころかもしれません!

2. サコッシュ

そもそも、サコッシュとは?

サコッシュとは、フランス語で「かばん」や「袋」を意味する”sacoche”に由来する、薄くて軽い小型のショルダーバッグのことです。

もともとは自転車のロードレースで、選手が走りながらドリンクや補給食を受け取るために使っていた肩掛けの袋がルーツとされています。競技の邪魔にならないよう、軽量で、両手が自由に使えるようにと生まれたデザインでした。

アウトドアからタウンへ

このように、スポーツやアウトドアの世界では、以前から「貴重品をどう身につけて運ぶか」が真剣に考えられてきました。

サコッシュウエストポーチは、その知恵の結晶ともいえる存在です。

もともとは競技用やアウトドア向きの機能的なデザインでしたが、近年はタウンユースへと広がりを見せています。

この「アウトドアからタウンへ」という流れは、これからも続いていくのではないでしょうか。アウトドアテイストのカラー・デザインをレディス向けに変えるなど、まだまだ新しいアレンジのアイディアが生まれる余地がありそうです。

3. シャトレーヌ

そもそも、シャトレーヌとは?

最後に取り上げるのは、「それ、何?」と思われる方も多いであろう歴史上のアイテム、シャトレーヌ。(筆者も美術館や演劇の舞台でしか見たことがありません!)

シャトレーヌ(シャトレーン)とは、フランス語で「城館の女主人」を意味する”châtelaine”に由来する装身具のことです。

中世、城や邸宅を切り盛りする女主人は、鍵の束をベルトに下げて持ち歩いていました。

家中の引き出しや戸棚、貯蔵庫の鍵をすべて管理することは、その家における女性の地位そのものを示すものでもあったといわれます。

18世紀から19世紀にかけて、この実用的な習慣は、鍵だけでなく懐中時計や裁縫道具、メモ帳などを吊るす、装飾性の高いジュエリーへと洗練されていきました。

エレガントな「肌身離さず」の可能性

「ポケット」や「サコッシュ」がどちらかというと機能性・カジュアルな方向に寄りがちなのに対して、シャトレーヌの発想は、もうひとつの可能性を教えてくれます。

それは、「エレガントに、大切なものを身につける」という視点です。

実際、かなり考え方が近いのが最近のウォレットショルダースマホショルダースマホストラップ。実用一辺倒ではなく、おしゃれなアイテムへと進化を続けています。

ストラップにパールやフリルが使われて装飾的になっていたり、プラスアルファのポーチやチャームが付けられるようになっているのは、このニーズがすでに現れているといえそう。
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実用一辺倒ではない、装う喜びとしての貴重品携帯。まさに現代版シャトレーヌ。——そんな新しい提案が育ちそうな分野。
服装とのコーデも含めて、まだまだクリエイティビティを発揮する余地がありそうな方向性です!

3つのアイテム、ざっくり比較

アイテム 由来 テイスト 向いているシーン
ポケット 中世英語「poket」(小さな袋) 日常・実用 デイリー・オフィス(衣服の一部)
サコッシュ 仏語「sacoche」(かばん・袋)、自転車競技用バッグ アウトドア・カジュアル 外出・旅行・アクティブなシーン
シャトレーヌ 仏語「châtelaine」(城館の女主人) エレガント・装飾的 現代版に進化?おしゃれな装いのアクセントに

POINT

  • この夏、「貴重品を肌身離さず身につけることの大切さ」を改めて考えよう
  • 現代の貴重品とは?キャッシュレス時代に再考したい
  • 「ポケット」「サコッシュ」「シャトレーヌ」の由来を学び、その発想を今後に生かそう

時代とともに、私たちが「大切に持ち歩くもの」は少しずつ変わっていきます。

スマホや鍵は変わらぬ必需品でありながら、現金や財布の在り方は緩やかに揺れ動いている——そんな今だからこそ、「貴重品を身につける」という視点からファッションを見つめ直すことに、新しい意味が生まれるように思います。

ポケットから、サコッシュから、そしてシャトレーヌから。それぞれの歴史と文脈に敬意を払いながらヒントを学んで、これからも自由にクリエイティビティを発揮していきたいですね。

よくある質問

Q. レディスファッションでポケットが少ないのはなぜ?
明確な理由は諸説ありますが、シルエットを美しく見せるためにポケットを省略・簡略化する傾向があると言われています。近年はデザイン性と機能性を両立させたポケット付きアイテムも増えています。

Q. サコッシュとポシェットは何が違うの?
どちらもフランス語由来の小型バッグですが、サコッシュは基本的にマチ(奥行き)がなく、もとは自転車競技用の平たいバッグ。ポシェットはマチがあり、女性用バッグとして発展してきた点が異なります。

Q. シャトレーヌは今も購入できるの?
オリジナルのアンティークは美術館やアンティークジュエリー市場で見られる程度ですが、チェーンや取り付け金具付きのアクセサリーやスマホショルダーは、その発想を取り入れた現代版シャトレーヌともいえます。近年種類が増え、手に入れやすくなっています。

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