春と夏の間にある、爽やかで暖かな空気を纏うかのような「ヘリオドール(Heliodor)」。
黄緑色がまばゆいヘリオドールは、エメラルドやアクアマリンの仲間です。
ヘリオドールは美しさと耐久性からもジュエリーとして楽しむのに申し分がないのですが、知名度がいまいち低い宝石。
今回はヘリオドールの基礎知識についてお届け。
ベリルの中でも控えめな存在である宝石の魅力に迫ります。
ヘリオドールの意味。和名、石言葉は?
ヘリオドールの意味と和名
ヘリオドールという名前は「gift from the sun(太陽からのギフト)」という意味のギリシャ語「helios」が由来。
ギリシャ神話の太陽神ヘリオスは、同じく太陽神として有名なアポロンよりも古くから信仰されていた神です。
希望の象徴でもあったヘリオドールは、古代エジプトや古代ギリシャでも重宝されていたと伝えられています。
主な産出地はナイジェリア、ブラジル、ウクライナやアメリカ。
ブリリアントカットやエメラルドカットなど、透明度と輝きを活かすためにファセットをつけたカットが施されます。
モース硬度は7半から8、六方晶系の珪酸塩鉱物。
劈開はなし。
ヘリオドールの和名は「緑柱石(りょくちゅうせき)」。
鉱物である「ベリル(Beryl)」の和名であり、エメラルド・アクアマリン・モルガナイトの和名も緑柱石です。
関連記事:宝石の和名が知りたい!名付けに役立つ宝石の名前や漢字のヒント一覧
ヘリオドールの石言葉
ヘリオドールの石言葉は「高尚な精神」。
芸術的なセンスを高めるなど、創造性を司る宝石と信じられています。
ヘリオドールはどんな石?希少性は?
カラーバリエーションは黄緑色のみ。
以前は淡い黄色や金色のベリルもヘリオドールとされていましたが、現在ではそれらはイエローベリル、またはゴールデンベリルと呼ばれます。
価値が高いウラル産ヘリオドール
宝石の中では比較的手に入れやすいとされているヘリオドール。
ベリルに鉄が混入することで生まれる淡い色味に、惹きつけられる方も多いのではないでしょうか。
結晶が大きく透明度の高いヘリオドールは価値が高いとされており、なかでもロシアのウラル産のヘリオドールは最高品質と評されます。
ウラル山脈は現存する山脈で最も古いとされ、エメラルドやトパーズ、金や銀、プラチナを産出することでも有名。
ヘリオドールの加熱処理、放射線照射処理とは
ヘリオドールは加熱によってアクアマリンにされることも。
アクアマリンの方が需要が高いと判断され、施される傾向にあります。
つまり、私たちが普段目にするアクアマリンはもしかすると元はヘリオドールだったかもしれないということ。
モルガナイトやグリーンベリルなどで品質が低いと判断されたものにも、同様の処理が行われます。
また、その反対もあります。
無色や淡い色のベリル(アクアマリンなど)は加熱処理後、放射線照射処理を行うことでヘリオドールに変化。
黄金のように華々しく輝く結晶を、産地を偽り天然ヘリオドールとして販売することも。
処理の有無を明記して販売しているのであれば問題ありませんが、産地や処理の有無を偽って販売しているショップやバイヤーは避けたいものです。
ゴールデンベリルとの違いは?
ヘリオドールの別名として、よくゴールデンベリルやイエローベリルが挙げられます。
しかし、先ほども述べたようにヘリオドールのカラーバリエーションは黄緑色のみ。
そのため、厳密にいうと別名ではありません。
それぞれの色に応じて名前が与えられているのです。
3種類とも鉄が含まれており、その含有量によって微妙な色の差異が生まれます。
※ほかにも発色の要因となる成分の違いによるなど、諸説あり
見分け方はというと、明確な基準がないため難しい場合も。
というのも、鉄の含有率が何%だとイエロー・ベリルといった標準的な区分はないため、同じ石でも鑑別機関によって結果が異なることもあるからです。
大まかには見える色で区分されます。
- 黄緑色=ヘリオドール
- 黄色=イエローベリル
- 金色=ゴールデンベリル
はっきりとわかるものもありますが、中間的な色合いだと判断が難しいということですね。
色合いで細やかに分類せず、黄色〜黄緑色のベリルをすべて「ヘリオドール」と一括りにしているショップもあります。
取り扱い時の注意点は?
硬度が高いため傷がつきにくく、比較的扱いやすい宝石。
日常の着用に問題はありませんが、ヘリオドールより硬度の低い石(7半以下)とぶつけたりしないように注意してください。
POINT
- 太陽からのギフトが由来のヘリオドール
- エメラルド、アクアマリン、モルガナイトが属するベリルのひとつ
- ヘリオドールとイエロー・ベリル、ゴールデンベリルの違いは色。しかし明確な区分はないため色で見分けられる
- ヘリオドールは加熱によってアクアマリンに。淡い色のアクアマリンも加熱と放射線照射でヘリオドールへ変化
【あわせて読みたい】青やピンクの色石と比べると控えめな黄色の宝石ですが、実は魅力たっぷり。
この記事を読んだ人は、こんな記事も読んでいます
大学卒業後、ジュエリー専門学校にてメイキングとデザインを学ぶ。ジュエリーセレクトショップ・百貨店にて販売員経験あり。あなたとジュエリー・アクセサリーとの距離を縮める記事をお届けします。