コラム

「#すわりコーデ」が話題。「インクルーシブファッション」とは?

「#すわりコーデ」とは?
どういう意味?という方も、先日のテレビ放映で気になった方もいらっしゃるのでは。

私たちがこれからのファッションを考える上で、社会課題を意識することも大切な時代になってきました。

今回はハッシュタグ「#すわりコーデ」を例に、注目される「インクルーシブファッション」の意味をひもときます。

「#すわりコーデ」とは?

車いすユーザーの声から生まれた「#すわりコーデ」

発端は、車いすを使用する人のおしゃれの悩み。

車いすユーザーにとって、ネットショップやSNSでの一般的な立ち姿のコーデ写真は、座ったときの着丈などがわからず参考にしづらいという悩みがありました。

そこでアパレル企業(アダストリア)と協力。「椅子にすわった状態でコーデ写真を撮影する」アイディアを形にして、ハッシュタグ「#すわりコーデ」を考案したのです。

意見交換の様子は2021年6月24日、NHKEテレ「バリバラ」で放映されました!

見逃し配信はこちら!

Tver https://tver.jp/episode/87396867

バリバラHP https://www.nhk.jp/p/baribara/ts/8Q416M6Q79/episode/te/3KM7J87JGM/

「#すわりコーデ」はみんなに役立つアイディアだった

私たちは想像以上に「すわっている」!

考えてみれば、誰でも日常生活で「座る」もの。

実は、日本人の1日の「すわり時間」は平均7時間と言われているそうです。想像以上に長いですよね!
特に最近は在宅ワークやリモートワークが増え、「1日中すわりっぱなし…」という方も多いのでは?

「座ったときの服の状態」は誰にとっても重要な情報。「#すわりコーデ」はみんなに役立つアイディアだったのです。

実際に、アパレルスタッフさんは座った時の裾の広がりや着心地などをコメントすることで、商品のさらなる魅力を伝えることができると気づかれた様子でした。

応用として「自転車に乗った時どうなるか」「袖の形状や、アームホールの太さはどうなっているのか」「キャスター付きの椅子に裾が巻き込まれないか」といった疑問にもこたえやすい着画であることが話題にあがっていました。

これまで「すわりコーデ」が少なかったのは?

もともと商品撮影をするのは、広告やカタログに掲載するため。
紙面に掲載できる写真の点数には限りがあり、1商品1画像であれば「商品やコーデ全体が写っている」立ち姿が優先されがちです。

それがWebの発展で大きく変化。今のネットショップ(ECサイト)の仕組みなら、かなり多くの商品画像を掲載することができるようになったのです。

またスマホが普及し、店頭スタッフが自らスマホで着画を撮影することも簡単になりました。

なので座っている画像も提供できるわけですが、まず立ち姿でポーズをとるこれまでの習慣が思い込みとなり、気づきを妨げていたのかもしれませんね。

車椅子ユーザーの一声が、すべての人の役に立つ発想の転換になったのです。

「インクルーシブファッション」とはどういう意味?

「インクルーシブファッション」とは?

この「#すわりコーデ」はアパレル企業の「インクルーシブファッションプロジェクト」の一環として提案されています。

インクルーシブファッション?聞きなれない言葉ですが、どういう意味でしょうか。

インクルーシブ(inclusive)とは「包括的な」「包み込む」という意味。

インクルーシブファッションとは、あらゆる人を孤立させず包括することを目指すファッションを意味します。

具体的には、障がいの有無、年齢、ボディサイズ、ジェンダーなどを問わず、誰もが自分らしく好きなファッションを身につけられることを目指す社会理念です。

ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)」という理念から派生した言葉なので、大きな考え方を表すキーワード。

アダストリアの掲げる「Play fashion!for ALL すべての人がファッションをもっと楽しめる社会を創る」という一文も、インクルーシブファッションの志をわかりやすく示していると思います。

ソーシャル・グッドな発想を大切にしよう

プラスサイズモデルの登場、メンズ・レディスの枠を相互に飛び越えたジェンダーレスファッションの提案…「私たちそれぞれの個性・多様性を大切にしよう」という傾向は年々高まっています。

古来ひとりひとりに合わせてあつらえていた衣服は、20世紀に大量生産されるようになりました。その産業化された現実も踏まえながら、社会の意識は今また多様な立場のひとを尊重する方向へと変わりつつあるのですね。

そんな中、「できることから一歩一歩より良くしていこう!」というポジティブな発想はとても大切なもの。

社会に対して良いインパクトを与える活動や製品、サービスの総称を「ソーシャル・グッド(Social Good)」と呼ぶのですが、今回の「#すわりコーデ」はまさにシンプルで有益、ソーシャル・グッドな発想の一例といえるのではないでしょうか。

POINT

  • 「#すわりコーデ」とは車いすユーザーの声をもとにアパレル企業が考案した座り着画のハッシュタグ
  • 「#すわりコーデ」はすわっている時間の長い現代人全員に役立つアイディア
  • インクルーシブファッションとは包括的なファッション。誰もが自分らしく好きなファッションを身に着けられることを目指す社会理念

社会課題というと、なかなか実現や解決が難しい壮大なテーマも多い印象ですが、困っている人の声にこたえるちょっとした対策が実はみんなの役に立つ…という事柄は、まだまだあるのかも。
「#すわりコーデ」のような身近なひらめき、注目していきたいです。