ジュエリーの基礎知識

【宝石の種類】ジェット:意味と和名、女王が身につけた漆黒のモーニングジュエリー

そのままの姿で美しい宝石もあれば、人の手が加わることで美しさに触れられる宝石もあります。

カットにより魅力を増す宝石のひとつが「ジェット(jet)」。

あまり知られていないこの黒い宝石は紀元前から採掘されており、加工のしやすさからカメオの素材としても用いられてきました。

宗教的な意味合いを持つ宝石として、または故人を悼む宝石として。
時代ごとに異なる人気を得てきた宝石なのです。

今回はジェットの基礎知識についてお届けします。

ジェットの意味、和名、石言葉は?

ジェットの意味と和名

ギリシャ語でリキアの石と川、ガゲスの石を意味する「gagates lithos」が語源のジェット。

その後ラテン語で「gagates」、古期フランス語で「jaiet」と変化し、「jet」となりました。

「黒琥珀(くろこはく)」とも呼ばれ琥珀同様、摩擦により帯電する性質からそう呼ばれるようになりましたが、琥珀ではありません。

モース硬度は2半から4、琥珀真珠珊瑚と同じ有機宝石。

ジェットの和名は「黒玉(こくぎょく)」

ほかにも黒い宝石はありますが、ヘマタイトは「赤鉄鉱(せきてっこう)」。
オニキスは「縞瑪瑙(しまめのう)」、オブシディアンは「黒曜石(こくようせき)」です。

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ジェットの石言葉

ジェットの石言葉は「忘れ去る」。
争いや怒りといった感情から解放され、心の混乱を鎮めると信じられていました。

ジェットは木の化石?モーニングジュエリーとは

樹液が化石化した琥珀、貝の体内で形成される真珠など、鉱物にはない色や艶を楽しめる有機宝石

ジェットも有機宝石のひとつですが、ほかの黒い鉱物とはどう違うのでしょう。

水に沈んだ木の化石

有機宝石の多くは硬度が低く、ジェットも主成分は木。

最も古いジェットは1億8千年前、恐竜が生きたジュラ紀の樹木が水中に沈み圧縮され化石化したと考えられています。

海水か淡水かの違いで、「ハードジェット」と「ソフトジェット」に区別。
どちらも成分としては石炭の一種です。

宝石のカット技術が向上したのはここ数百年のこと。
宝石発見当初は孔開けや黒曜石で表面を少し整えたりなど、簡単な細工しかできませんでした。
しかしジェットは加工のしやすさから、早い段階でカメオやバングルとして加工されていたのです。

ではなぜジェットは加工がしやすいのでしょう。

それは単に柔らかいだけでなく、ジェットの特性である粘りの強さが挙げられます。

ジェットを丁寧に磨くと、ビロードのような艶やかな輝きを放ちます。
ヘマタイトの金属のような光沢や、オニキスのシャープな艶とはひと味違う、しっとりとした輝きを楽しめるジェット。

その違いがよくわかるのがカービング

ゆるやかな曲線や人の顔、表情を繊細に彫ることができるので、柔和な印象のカービングジュエリーをお探しであれば、「ジェット」で探してみてはいかがでしょう。

また、艶のある黒以外に、研磨するとメタリックな輝きが現れるジェットもあります。
小さい「パイライト(黄鉄鉱)」を含むジェットを磨くことで、真鍮色の輝きが現れるのです。

モーニングジュエリーとして愛されたジェット

時に宗教的な意味合いを持つものとして、人々と関係を築いてきた宝石。

ジェットもその例に漏れず、中世ヨーロッパでは修道士のためのロザリオ(十字架)へ加工されたり、スペインの巡礼者にジェットのカービングが販売されていたのです。

古くから人々との関わりを持ってきたこの黒い宝石。

19世紀にはイギリスのヴィクトリア女王がモーニングジュエリーとして身につけたことで、ジェットの人気に火がつきました。

モーニングジュエリー(mourning jewellery /jewelry)とは、喪に服す期間に身につけられる装身具を指します。

夫のアルバート公をなくしたヴィクトリア女王は20年に渡りジェットを身につけたと伝えられています。

ジェットの主な産地であるイギリスのウイットビーにはジェットの研磨加工場も建てられ、ヴィクトリア女王が身につけたのもウイットビー産のジェットとされています。

そうした背景もあり、ヨーロッパ中でジェットジュエリーが流行。
モーニングジュエリーとして、また日常使いのジュエリーとしても人気を博したのです。

取り扱い時の注意点は?

硬度は2半から4ととても低く、傷がつきやすいため取り扱いには注意する必要があります。

もちろん超音波洗浄器は厳禁

酸にも弱いため、汗は柔らかい布で拭ってから保管してくださいね。

また、有機宝石のため乾燥によるひび割れが起こることも。
直射日光を避け、ほかの宝石とぶつからないよう保管することをおすすめします。

POINT

  • ジェットは真珠や琥珀、珊瑚と同様の有機宝石
  • ほかの黒い鉱物との違いは、磨いた時に現れる独特の光沢と艶
  • 19世紀にはモーニングジュエリーとしてヴィクトリア女王が身につけた
  • 硬度が低く傷がつきやすいため、取り扱いには注意を払うこと

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