コラム

大河ドラマ「青天を衝け」衣装:栄一(吉沢亮)、和装から洋装へ!

2021年NHK大河ドラマ「青天を衝け」(NHK 日曜夜8時~)。

「日本資本主義の父」とも称される渋沢栄一(吉沢亮さん)を主人公に、激動の幕末から明治を描く物語です。

武士ではない栄一のフラットで柔軟な視点が新鮮!
対極に江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜(草彅剛さん)を配して複雑な幕末期をわかりやすく表現、青春の輝きから歴史の悲哀まで描く見応えのある作品。
徳川家康(北大路欣也さん)がナビゲーター役なのも斬新です(明治時代になったらどうなるのでしょうか?)。

ドラマはついに大政奉還、江戸から明治へ。ちょうど日本を離れパリ万国博覧会の随員だった栄一は現地でちょんまげ姿から洋装へ!

今回は大河ドラマ「青天を衝け」の衣装について少し紐解いてみたいと思います。

渋沢栄一(吉沢亮さん)のテーマカラーとは?

生まれた場所と「藍色」を慈しむ栄一

栄一(吉沢亮さん)のテーマカラーといえば、青、紺…藍色

武蔵国・血洗島村、藍玉作りと養蚕業を営む百姓の家に生まれた栄一にとって、藍は非常に身近な色。生活必需品で商売の種でもありました。

広大なオープンセットに畑を作り、実際の藍玉作りや藍染め、藍の買い付けといった当時の生活を丁寧に描いていた「青天を衝け」。

それらの経験が栄一の血肉となったように、衣装もまたルーツとなる藍染めの色、ブルー系を大切に作られているようです。

栄一のイメージ「自分の生まれた場所に慈しみを持ち続け、ずっと変わらず藍色が好きだった人」(監督談)が衣装にも反映されています。

ドラマタイトルも「青天」と青が入っていますしね。数奇な運命で武士となってからも、基調はブルー系!

栄一の衣装は、当時の「青い国」日本そのもの

こちらは実際のホトガラフ(写真)に似せた撮影した栄一の写真。

当時は写真の黎明期、もちろんカラー写真は残っていませんが、日本の庶民はどんな色を着ていたのでしょうか?

実は栄一のテーマカラー、血洗島村の風景は幕末~明治の日本そのものの印象とも重なるようです。

当時は倹約令なども出ていて、庶民は地味な服装が中心でした。

(ドラマの衣装も、おさえた色味の中でトーンの違いで奥行を出し、当時の色合いをこまやかに表現しているそうです。)

ですから限られた中で粋に見せる色のひとつが藍染めの青だったのです。

藍染めは、濃淡によって美しい色合いが出せる上、汚れが目立たず、抗菌性や防虫性といった機能性もあり、都市から農村まで広く普及しました。
染物屋を「紺屋(こうや)」と呼び、「紺屋の白袴」ということわざが今も残っていますよね。

明治期に来日した英国の化学者ロバート・W・アトキンソンは全国至るところで青色の衣装が使われていることに驚き、これをジャパン・ブルーと呼んだそうです。

小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が初めて日本を訪れた時の第一印象も、青いのれんや青い着物…。「東洋の第一日目」という文章で、日本の美しい青の風景を描写しています。

和装から洋装へ!五代・慶喜・栄一の衣装

ドラマで最も早く洋装を魅せた「五代さま」

さて、大河ドラマ「青天を衝け」は和装から洋装への転換期へ。

この洋装の取り入れ方は、それぞれの立場やキャラクター像の表現としても興味深い一面です。

いち早く洋装を見せたのは、幕臣の主人公・栄一ではなく薩摩藩の五代友厚(ディーン・フジオカさん)。

先見の明を持つ男「五代さま」。朝ドラ「あさが来た」でも演じたディーン・フジオカさんの当たり役ですが、「青天を衝け」ではよりラフで行動的、ソフトに見せてしたたかでもあり、新時代の実業家ムードを強く感じます。

衣装もラフさとソフトな高貴を併せ持つ洋装。
素朴なツイードのベストに、カルゼやフランス綾などと言われる、斜線がはっきり出た綾織のスーツ姿が魅力的です。斜め上に上昇していく人物像の表現かもしれません。

髷と軍服。徳川慶喜の洋装

次に印象的だったのは、徳川慶喜(草彅剛さん)の軍服姿。

徳川慶喜はもともとベージュ系の穏やかな和装が中心でした。

第十五代征夷大将軍となった慶喜が着ていたのは、ナポレオン3世から贈られたフランス式軍服。実際の写真も残っている有名な姿です。

髷と軍服…徳川家や将軍という宿命の重圧、海外勢との渡り合い、伝統を重んじる心と開明的な思考の相克…さまざまな葛藤と覚悟を感じさせます。

徳川慶喜は当時から「二心殿」と呼ばれたほど実像がつかみにくく、作品によっても描き方が異なる難しい人物ですが、草彅剛さんは慶喜が憑依しているかのよう!
「青天を衝け」の幕末期の描き方とも併せ、非常に興味深い人物像となっています。

(Instagramはオフショットなのでドラマの印象とはちょっと違いますが…。)

栄一の「洋装を受け入れる柔軟性」と「やっぱりテーマカラー」

そしてパリで新しい価値観=洋装を取り入れた栄一(篤太夫)!

異国のすべてに目を輝かせ、風通しのよさを体感し、「郷に入っては郷に従え」と髷を落とすことのできる柔軟な性格の栄一と、対比として旧来の価値観を捨てられない水戸藩士の描写が面白かったです。

とはいえ、栄一は洋装でもやっぱりテーマカラーの藍色系

みんながうれしいのが一番、この国を守る…故郷からつながる深い気持ちは変わらないことを示しているのではないでしょうか。

吉沢亮さんは、明るく好奇心にあふれ、合理的で数字に聡く情も深く、柔軟に良いことを吸収し実践していくキャラクターを全身で表現してきています。

そんな栄一の洋装の生地は、ブルー系の濃淡で奥行きを出したヘリンボーン(に見えます)。

青天の志は一貫しながら、百姓から武士へ、倒幕思想から幕臣へ、日本からパリへ…さまざまな出会いを経て奥行のある人生を織りなして来た栄一の人生を表現するかのような洋装ですね。

「青天を衝け」の衣装はテレビ画面でも素材感や仕立て感がわかるほどのつくりが良いですね。
染める、織る、仕立てる…当時のひとの手仕事、時代とドラマの世界観、登場人物像をしっかり感じさせる衣装の魅力、ドラマの展開とともに今後も期待していきたいです。

POINT

  • 大河ドラマ「青天を衝け」栄一のテーマカラーは藍色、ブルー系
  • 五代、慶喜、栄一…それぞれの洋装の特徴が興味深い
  • 手仕事感、世界観、人物像を味わえる衣装も「青天を衝け」の魅力

いよいよ明治時代。パリで大政奉還を知った栄一の運命は?
また衣装にもかかわる期待といえば、美しいオープニングで見受けられる鹿鳴館時代の雰囲気なども今後出てくるでしょうか。
御一新以降も怒涛の展開が期待される大河ドラマ「青天を衝け」、今後も注目です!

大河ドラマ「青天を衝け」公式ホームページ(NHKオンライン)