2025年上期のNHK連続テレビ小説、通称朝ドラ「あんぱん」。
「アンパンマン」を生み出したやなせたかしさんと暢さん夫婦をモデルに描かれる愛と勇気の物語です。
主演:のぶを演じるのは今田美桜さん、柳井嵩を演じるのは北村匠海さん。
「あんぱん」の登場人物は、明らかにジャムおじさんを意識したヤムおんちゃんことパン職人の屋村(阿部サダヲさん)をはじめ、「アンパンマン」のキャラクターを彷彿とさせる人物が満載!
脚本の中園ミホさんも、登場人物をキャラクターに当てはめていると取材に答えられています。
その元のキャラクターと、物語における個性ある人物造形が融合して、より味わい深いドラマになっている「あんぱん」。衣装からもその片鱗を感じることができます。
物語を振り返りながら、女性陣を中心に「あんぱん」の衣装を見ていきましょう!
三姉妹のキャラクターイメージとテーマカラー
朝田家の三姉妹のキャラクターイメージは?
物語の重要人物である朝田家の三姉妹(のぶ:今田美桜さん、蘭子:河合優実さん、メイコ:原菜乃華さん)。
この3人のキャラクターイメージについては、早くから<のぶ=ドキンちゃん、蘭子=ロールパンナちゃん、メイコ=メロンパンナちゃん>という考察がされていました。
衣装のテーマカラーものぶはオレンジ、蘭子は青、メイコは緑。
猪突猛進の“ハチキン”で正義感の強いのぶ、真面目でクールな蘭子、天真爛漫なメイコの性格にも合っていますよね。
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この三姉妹のテーマカラーは子役時代の和装から始まり、戦後の大人になった時代までずっと貫かれているので、わかりやすいですよね!
カーディガンがいい仕事しています。
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ちなみに健ちゃんこと辛島健太郎(高橋文哉さん)のキャラクターイメージはカレーパンマン!
衣装でわかる、移り変わる時代と服装
和装、もんぺからフレアースカート…時代の変遷と服装
テーマカラーが固定されている一方、着ているアイテムや髪型は物語の時代、そして人生の節目に合わせて変わっていきます。
戦前ののぶは(制服を除き)和装。教師としての袴姿やお見合いの時の振袖、最初の結婚の時代。
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戦時中はもんぺ姿に。「正義」が鍵となる「あんぱん」、厳しい戦争の時代を朝ドラとしては腰を据えて長く描いた点も作品の特徴です。
戦後、のぶの上半身は洋装になりますが、ボトムはもんぺのままです。
ジャケットは組織で働く女性の象徴かも。(高知新報時代のドラマの雰囲気、けっこう好きでした…!)
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それが、嵩の思いがのぶと通じ合う頃、ボトムはフレアースカートに。
戦時中、ぜいたくは敵と言われ好きな服装さえ封じられた女性たちにとって、生地をたっぷり使うフレアースカートは平和とおしゃれする自由の象徴でもありました。
「あんぱん」では、のぶが自分の愛情を自覚するタイミングにも重なっていたように感じます。
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アンパンマンの構想、詩集からの発展…と、嵩の新しいステージを共に歩むのぶの衣装は、印象的な柄シャツ。
昭和40年代の流行ということもありますが、次々と言葉があふれ、やがてアンパンマンのキャラクターたちも次々と生まれるだろう…そんな温かくにぎやかな未来を予感する柄です。
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蘭子の昭和のキャリアファッションに注目!
次女の蘭子(河合優実さん)も、時代・人生の変化とともに和装から戦後の働く女性へと変化していきます。
特に東京でフリーランスの物書きになってからは、明らかにモダンで洗練された印象に。
テーマカラーの青系というルールは守りながら、水玉のスカーフ使いやくっきりしたネイビー×白のバイカラーの着こなしが素敵(画像2枚目)。
現代の私たちのコーデの参考にもなりそうです。
豪ちゃんとの切ない恋も忘れられない思い出ですが、同じく心に秘めるタイプの八木さん(妻夫木聡さん)との静かな関係性の深まりも気になりますね!
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大人の女性、薪鉄子先生と登美子さんの衣装
ガード下の女王・薪鉄子先生のキャラクターイメージは?
大人の女性として注目の登場人物も見てみましょう!
真のアンパンマン!である、戸田恵子さんが演じた豪胆な代議士の薪鉄子先生。キャラクターイメージは鉄火のマキちゃんと言われています。
薪鉄子先生のテーマカラーは明らかに「白」。真珠のネックレスも印象的です!
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個人的には、これは鉄火巻きのシャリ…つまりお米からの連想では?と思っています。
しかも単なる白ではなく、ジャカードなど織り柄の生地がふんだんに使われたクチュール風のスーツ。
これは、「当時の女性代議士はファッションも流行の最先端を行っていた」ということからでもあるし、ツヤツヤのごはんの陰影を意識しているのかも?でもあるし、もうひとつ…。
最終的には、方向性の違いから、のぶを解雇する薪鉄子先生。
おなじ正義感にあふれる同志でありながら、「清濁併せ呑む」現実の政治の世界を生きていく女性。その陰影を表現しているのではないでしょうか。
とても難しい役。だからこそ、アンパンマンの戸田恵子さんを配役したのかなと感じた人物でした。
嵩の母・登美子さんのキャラクターイメージは?
嵩の幼少期から常に強烈なインパクトを残してきた登美子(松嶋菜々子さん)。
美しく勝気、時に嵩を振り回しながらも、自分軸でポジティブに生き抜いていく登美子さん。
そんな彼女はドキンちゃんのモデルの要素もあり、ばいきんまんの要素もありそう。
ブルー~青紫系のベースカラーにオレンジなどが入っている着物はその両面を表しているのではないでしょうか。
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「逆転しない正義とは?」という理想を追い求める嵩とのぶに対してのカウンター的存在でもありますよね。
後半では仲良くなる登美子とのぶ。ばいきんまんとドキンちゃんの発想のもとがこの衣装にも…?
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登美子も複雑で人間らしい造形で、それでいてストレートな物言い、見ごたえのある人物ですよね。
松嶋菜々子さんはどこか名作「やまとなでしこ」の桜子さんを彷彿とさせる性格と相性がよいのか、当たり役!
自分の道を行く登美子さん、文化的な清さんという両親、育ての親である寛さんと千代子さん、そして戦死した千尋くん、人生の支えとなってくれたのぶ…嵩をめぐる人物がとても表現豊かに描かれてきた「あんぱん」。アンパンマンもばいきんまんも多くのキャラクターも、その中から生まれてきたというのが納得できる作品です。
POINT
- 朝ドラ「あんぱん」は、アンパンマンの生みの親をモデルとした物語
- 朝田三姉妹のテーマカラーはキャラクターに合わせたオレンジ・青・緑
- 薪鉄子先生に登美子、大人の女性の複雑な人物造形を深読みしたくなる衣装にも注目
ちなみに今週登場する小学生とのファンレターからの出会いは、中園ミホ先生ご自身のリアルなエピソード。キャラクターを駆使したドラマの中にご本人も登場!の作劇に、天国のやなせ先生も微笑まれているのではないでしょうか。
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